この世には人間はもちろん、動物にも様々な病気がある。先天から後天、骨の変形や臓器の異常、癌や感染症、遺伝や原因不明の疾病などなど挙げれば枚挙にいとまがない。
そんな中に「アレルギー性疾患」というものがある。日本人であれば多くの者は馴染み深いものだろう。花粉症などはまさにアレルギー性鼻炎という疾病だ。
アレルギー性疾患だけでも実に多くのアレルギーが存在する。先述した花粉だけでもスギやバラ、ブタクサなどなど様々だ。
個々人がどのようなアレルギーを持っているかを確実に調べるのは非常に困難だ。あまり研究が進んでいない分野は尚更だが、アレルギー性疾患は極めて多様的であり、研究が進みにくい分野でもある非常に厄介な疾病だ。
2009年に発見された「アルファ・ガル(α-gal)症候群(AGS)」
アルファ・ガル症候群(AGS)は2009年に発見されたガラクトース-α-1,3-ガラクトースに対するIgE抗体反応を伴うアレルギーで哺乳類肉アレルギーとも呼ばれる。
発見が最近であることと、多様で非典型的な症状を呈することから、医学界ではあまり理解されていない。反応はしばしば重篤で、時に致死的だ。
注射薬に対する過敏反応のように即時型であることもあれば、哺乳類肉を摂取した後によく見られるように2〜10時間遅れて起こることもある。遅発性の反応は、しばしば夜中に起こる。
原因はマダニ
AGSはマダニに噛まれる事で発症する事が証明されている。噛まれるとα-galへのIgE抗体が20倍に増加し、AGSを発症する場合がある。
アレルギー反応が起きるのは哺乳類の肉や臓器、乳製品、哺乳類成分を含む医薬品や家庭用品など多岐にわたる。α-galが哺乳類に含まれるため、哺乳類肉アレルギーと称されるが、例えばカラギーナンなどもa-galを含んでいるため発症する可能性がある。
マダニは他国は勿論、日本にも全国的に存在する。行政でもマダニの注意喚起は定期的に行われている。私生活にも影響する非常に厄介なアレルギー性疾患だ。
原因不明のアナフィラキシーと呼ばれるすべての患者の9%がAGSであるという報告があるように、知らずのうちにマダニに噛まれ、アルファ・ガル症候群を発症していた、というケースも少なくない。
他の病気も並行する事で難解化
米国ミズーリ州のカンザスシティ郊外に住む56歳のとある農場労働者は多くのアルファ・ガル症候群患者と同様にマダニに噛まれて発症した。7年前にハンバーガーを食べ、数時間後に腰と腕に発疹が出来たのだ。
最近、医学雑誌『BMJ Case Studies』誌に症例として紹介されたこの患者の場合、季節性アレルギーと21歳の時に感染したHIVの治療で、さらに複雑な病歴を持つことになった。
彼は何年も自分の症状を医師に報告していましたが、具体的な診断に至ることはなかった。洗剤を変えても効果がく、新しい服を着てもダメ。食物アレルギーの場合、その食品を食べると数時間ではなく数分で症状が出るため、当初は食物アレルギーと判断された。
発症の切欠
アレルギーは通常、体が認識できないタンパク質に反応することによって起こる。アレルギー反応を引き起こす炭水化物に出会ったことは、非常に珍しい事だ。
先ほどの患者は自宅近くの山へハイキングに出かけ、マダニに刺された。その年の暮れにラムチョップを食べたところ、アレルギー反応が出たのだという。
ラムや牛肉などの肉類に含まれる炭水化物を感作するのは、マダニの唾液中のタンパク質に付着したα-galである。調理しても分解されないので、体内に入ると体が過剰に反応してしまう。
この患者は赤身の肉を食べない事で8年ほど問題なく過ごせている。
アルファ・ガル(α-gal)症候群について、まずは医師が学ぶ必要がある
前述したようにAGSは、認識されたばかりで研究対象としてはまだ新しい病気だ。医師など医学会からの認識も低いため、診断を誤るケースが多い。
虫を媒介するため、季節的な流行や薬やその成分に対する反応の可能性、他の病気や治療との相互作用についてなどなど、学ぶべきことがたくさんある。
例えば哺乳類の肉がダメだから鳥なら良いだろう、と通常なる。実際鶏肉なら比較的安全だ。しかし、α-galは一部の鳥の目からも発見されているため、油断は出来ない。
医師がアルファ・ガル(α-gal)症候群について学び、理解し、患者の対面した時に可能性の一つとして考えるよう浸透するまでまだ時間はかかるだろう。
もし、肉を食べてアレルギー反応が出た時は同疾病のキャンペーンサイトであるAGIを見せると良いだろう。
場合によっては理解してくれる医師に会えるまでセカンドオピニオン、サードオピニオンを繰り返す事になるかもしれない。だが、アルファ・ガル(α-gal)症候群はまだまだ専門家にさえさほど知られていない疾病だ。諦めずに理解してくれる医師を探そう。