医療・健康
塩分過多による病死を減らす方法を探る

塩を代替塩にすれば毎年数百万人の命を救うことができるという研究結果

世界中で料理に使われる塩はもはや一般的な調味料であり、無くてはならない存在と言っても過言ではない。

安価で汎用性の高い調味料とあって非常に人気があり、世界ではタイが最も摂取率が高く、韓国、シンガポール、日本、中国、ベトナム、ミャンマー、イタリアと上位8位のうち7位までが全てアジアとなっている。(参照:社会実情データ図録

そんな塩だが、過剰に摂取すると様々な病を引き起こすものとしてもよく知られている。世界平均は10gほどだが、WHOの推奨する摂取量は5g。日本も今の半分以下にする事が薦められている

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心疾患リスク

心疾患のリスクを減らすには


ナトリウムは、塩(塩化ナトリウム)を構成する2つの主要元素のうちの1つだ。

これまでの多くの研究で、心血管リスク増加など、食事におけるナトリウム過剰摂取と健康問題との関連性が報告されている。

その一方で、カリウムの不足が健康に与える影響をプロットしており、血圧にも悪影響を与える事が報告されている。

心疾患リスクを軽減するにはナトリウムを減らし、カリウムを摂取する事が必要というのが分かる

塩分含有量の多い土壌で育つアッケシソウはグリーンソルトという名で代替塩として使われている。(出典:Wikipedia

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代替塩は存在するものの・・

では、ナトリウムが少なくカリウムが多い代替塩を作れば解決するのでは、という考えに当然至る。

日本では減塩という表記はよく見かけるものの、代替塩は一般的なスーパーマーケット等では殆ど見かけない。

では存在しないのかといえば、他国では存在し、一般的に売られている(Wikipedia・英)。

AlsoSaltの代替塩グリーンソルトと呼ばれる水分を抜いて粉末状にしたアッケシソウ(シーアスパラガス。塩分含有量の高い湿った土壌で成長する)などがそれにあたり、ナトリウムがゼロ、或いは少なく、カリウムが多く含まれるため、先ほどの2つの問題を解決できる。特にグリーンソルトは苦みも無く、現在の食塩とほぼ同等の味を実現できている

だが、このような代替塩が期待されているにもかかわらず、脳卒中や心臓病、死亡への影響を調査した大規模な臨床試験が行われておらず、その効果について明確なエビデンスが無いのが現状だ。

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塩を代替塩に変える事で数百万人の命が助かる可能性

数百万人の早死にを解消できるかも


オーストラリアのGeorge Institute for Global Healthの臨床疫学者、ブルース・ニール氏は以下のように語る。

「世界中のほとんどの人が、必要以上に塩分を摂っている。世界中で食塩を代替塩に切り替えれば、毎年数百万人の早死にを防ぐことができる。」

この結果を裏付ける大規模な調査が中国で行われた。

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実験内容と結果


今回の研究でニール氏とその研究チームらは、中国の農村部に住む2万人以上の人を対象に、脳卒中の既往歴や血圧が低い人を募集して調査を行った

参加したのは600の村で、平均年齢は約65歳。参加者の半数に試験期間中に使用する代替塩を無料で配布した。
(※5年間の実験として計画されたが、パンデミックの影響を若干受けた)

この代替塩は、ナトリウムとカリウムの含有量を減らしたものだ。一方、残りの半分の村人たちは対照的に、これまで通り料理や調理に塩を使用した。

結果的にこの2つのグループの健康上の成果に顕著なコントラストが見られた。実験開始から約5年後、参加者のうち4,000人以上が亡くなり、3,000人以上が脳卒中、5,000人以上が何らかの心血管トラブルに見舞われた。これは対象年齢や当時の健康状態を考えれば予想外の結果ではない。

しかし、代替塩グループは食塩常用グループに比べ脳卒中の発症率が低く(1,000人年あたり29.14件 / 33.65件)、心血管トラブルの発生率(49.09件 / 56.29件)、死亡率(39.28件 / 44.61件)も低かった。

もし、世界中の人々が通常の塩から代替塩へ切り替えれば、同じ単純な置き換えで換算すると年間何百万人もの命が救われるだろうとニール氏らは考えている

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個人以外に企業努力、政府努力も求められる


代替塩は通常の塩よりも少し高価ではあるが、特別高いものではなく、ある程度流通のある米国では年間数ドルの差で切り替えが可能だ。

だが、個人の努力だけでは難しく、結果を出すには企業努力、政府努力も必要だろう

人は全ての食事を自炊している訳ではない。加工食品にも含まれるし、外食をすれば塩分はむしろ多めに入っている事が多い。

とはいえ、企業だけにコストを支払わせるのは酷と言えるだろう。自国民の長寿と繁栄を国が望むのであれば、国や政府機関にも動いてもらう事が求められる。

まずはレシピ本を見てチャレンジするのも意識改革に繋がるだろう。

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参考文献

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Amet

旅行が趣味の団塊ジュニア世代。旅先で歴史を学んだり遺跡を見学したりその土地の食べ物を楽しむ事をライフワークにしています。本業はテクノロジー/マーケティング関係で情報収集と分析が専門です。

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