医療・健康
小さな子の命を奪う難病・アレキサンダー病の治療法に光!?

不治の難病・アレキサンダー病の有望な治療法の研究が更に前進。いよいよ臨床試験をラットからヒトに移行。

現在、人類や家畜類に罹る様々な疾病の殆どは医学によって解決、或いは研究されている。世界中に医学の研究機関があり、そのおかげで、例えば今世界を揺るがしている新型コロナのパンデミックへの対抗策であるワクチンを2年も経たずに開発した。

まさに人類が今、これだけ繁栄し、多くの同種を増やす事が出来たのは病気や怪我で命を落とす機会を大きく減らした医学の発展が大きく貢献している。

だが、世の中には様々な病気が存在する。先天性のものや後天性のもの、遺伝や突発性、感染症などの中に、まだまだ「不治の病」と呼ばれる難病は多く存在する。

そんな難病のうちの1つである「アレキサンダー病」に効果的かつ有望な治療法の研究が前進、いよいよ臨床試験をラットからヒトに移行すると報告があった。

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アレキサンダー病の治療法に光

アレキサンダー病は進行性のまれな神経疾患で、今のところ治療法は無い。だが、ウィスコンシン大学マディソン校の研究チームによってアレキサンダー病のラットモデルを用いた治療法の可能性が示された。

研究チームはイオニス社と共同で、アンチセンスオリゴヌクレオチドと呼ばれる小さなDNAからなる治療法を開発、ラットモデルにおいて、細胞内のmRNAを標的とし、そのmRNAにタグを付けて破壊することで、タンパク質の生成を効果的に停止させることができた。

このラットモデルは、臨床試験の基盤となっただけでなく、GFAP変異と白質障害との関連性を哺乳類で初めて調べるなど、まだ解明されていない病気の側面を研究する道を開いたのだ。いよいよ臨床試験はヒトを対象とするフェーズへ移行する。

この研究結果は「Science Translational Medicine」誌に掲載されている。

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アレキサンダー病について

巨脳症および脳室周囲白質軟化症を示すアレキサンダー病の4歳男児の脳(脳室周囲の褐色の変色に注目)。(出典:Wikipedia


アレキサンダー病研究室の創設者であるメッシング氏は、アラバマ大学バーミンガム校の同僚であるマイケル・ブレナー氏とともに、20年以上前にアレキサンダー病の原因となる遺伝子を発見した。

アレキサンダー病に罹ると、脳や頭が肥大し、発作や発育の遅れが見られ、手足が硬くなり、知的障害を持つことがある。脳の白質が破壊されるこの病気は、症状が顕著になるまで診断されないことが多い。

アレキサンダー病(指定難病131) – 難病情報センター

多くの場合2歳から9歳くらいで確認される。日本でも50名ほどのアレキサンダー病患者がいるとされている。早期の治療法確立が待たれる。

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問題となっていた点

アレキサンダー病の特徴のひとつに、ローゼンタール線維と呼ばれる異常なタンパク質の凝集体が形成されることがある。これはGFAPと呼ばれるタンパク質を作る遺伝子の変異が原因だ。

この異常GFAPと、アレキサンダー病で見られる白質の破壊との関係はまだ明らかになっていないが、このタンパク質の変化は、ほとんどすべての症例において、この病気の本質的な部分となっている。

3年前に発表したマウスモデルを用いた研究では、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)がGFAPを減少させ、ローゼンタール線維を消失させることができた。

しかし、マウスはアレキサンダー病のわずかな症状しか示さないため、研究者は、治療によってもたらされる可能性のある行動や生活の質の改善を測定することができない。

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新たなラットモデルを開発し、必要なデータを取る事に成功

研究チームは、人間に見られる白質の損傷や身体的症状をよりよく表すラットモデルを開発することに成功。このモデルで、アンチセンス・オリゴヌクレオチド治療による症状の改善を評価する事が可能となった。

身体に大きな症状が出る前にアンチセンス・オリゴヌクレオチドを投与したラットは、健康な同胞とほとんど見分けがつかなかった。

症状が重くなってからアンチセンス・オリゴヌクレオチドの投与を開始すると、症状が劇的に改善しただけでなく、白質の損傷の一部が回復した。

アンチセンスオリゴヌクレオチドは、GFAPの凝集体(またはローゼンタール線維)を除去する。早い段階で治療することで、病気を未然に防ぐことができるだけでなく、最悪の状態での治療にも効果が期待できる。

次フェーズの人への臨床試験で更なるデータの取得と、早期の治療法確立に期待がかかる。

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参考文献

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Amet

旅行が趣味の団塊ジュニア世代。旅先で歴史を学んだり遺跡を見学したりその土地の食べ物を楽しむ事をライフワークにしています。本業はテクノロジー/マーケティング関係で情報収集と分析が専門です。

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