新たな歴史的発見は基本的には発掘の元で生まれる。だが、例外もある。
例えばルーブル美術館や大英博物館など大量の所蔵数がある美術館等ではまだ全ての品を100%鑑定できていない。例えばフェルメールの「窓辺で手紙を読む女」の背景に別の絵が隠されていた件もその1例だ。
鑑定には時間がかかる故に、このように所蔵品から新発見が生まれる事も少なくない。
世界最古の幽霊の絵
この度、大英博物館で所蔵されていた約3500年前に作成されたと思われる古代バビロニアの粘土板から世界最古と思われる「幽霊の絵」が発見された。
粘土板には「恋人によって死後の世界へと導かれる、ヒゲを生やした孤独な男性の霊」の絵が確認されている。これは、当時の霊媒師(エクソシスト)が霊を祓う目的で依頼者(或いは患者)に状況を説明しているものと思われる。
男性の幽霊は両手を広げ歩いており、女性が持っているロープで手首を縛られている。石板に添えられたテキストには2人を幸せに冥界へ送り出すための儀式が詳しく書かれていた。
大英博物館の中東部門の学芸員であるアービング・フィンケル博士は以下のように分析する。
「これは男性の幽霊で、明らかに悲惨な姿をしています。背が高く、痩せていて、ヒゲを生やした男性の幽霊が家の中をうろうろしているのが人々を怖がらせたのだと思います。最終的には、この幽霊が必要としていたのは、恋人だったのではないかエクソシストが判断したのでは、と考えています。」
見過ごされてきた作品
19世紀に博物館に収蔵されて以来、この石盤は展示されたこともなく今まで忘れ去られていたのだ。フィンケル博士は、この石板が今まで見過ごされてきたと語る。
石板には明確なメッセージがあり、非常に質の高い文章と完璧なデッサン力があった。この石盤がこれまで誤って解読されていたことに気づいたのは、フィンケル博士が古代中東で使用されていた楔形文字の世界的権威であるが故だろう。
この幽霊の絵は上から光を当てて見ないと浮かび上がらないため、よく観察する必要があった。絵が描かれている部分は一見何も無いように見えるが、ライトを上から当てると絵が浮かび上がる。
石板に書かれていたもの
石版の半分は欠けており、手のひらに乗るほどの小さなものだ。だが、裏面には幽霊への対処法がびっしりと書かれている。
その対処法は男女の人形を作り儀式に使う、というもの。書かれている儀式は以下の通りだ。
そして文章の最後に「後ろを見てはいけない」という警告文で締めくくられている。
石板の今後
フィンケル博士は、この石版が霊媒師の家や寺院にあったであろう図書館のような施設の一部だったと考えている。
博士はこの発見を、博士が出版する予定の『The First Ghosts: Most Ancient of Legacies』に掲載した。
博士は石板を博物館に展示したいと考えている。3500年前から幽霊を恐れ、祈りや儀式で払おうとする文化があった事を多くの人に知ってもらうためだ。博物館の今後に期待したい。