声を真似たり人に良く懐くオウムやオカメインコなどの賢い鳥はペットとしても人気が高い。SNSなどでも見かける機会は多いだろう。
そんな賢い鳥たちの「異常な反復行動」を見たことがある方も少なくないのではないだろうか。
ケージの棒を執拗に噛んだり体を揺らしたり、羽を噛んだり抜いたりする個体もいる。この場合、重大な心理的問題を抱えている可能性がある。
刺激が無さすぎる問題
オウム、インコ、オカメインコなどの頭の良い鳥は、精神的な刺激を与えないと、重大な心理的問題を抱える可能性が高いことが、新しい研究で明らかになった。
野生のオウムは1日の4分の3以上をエサ探しに費やすことがあるが、家庭で飼われているオウムは通常1時間以内だろう。
このように認知的な刺激が欠ける事がオウムたちにとってストレスとなり、異常行動をし始める。
調査
研究者チームは、1990年代初頭に米国で行われた2万羽以上の鳥の飼育下での繁殖の成功例の調査結果と、50種1400羽のペットのオウムを対象としたオンライン調査の2つのデータを調べ、今回の結果を導き出した。
典型的な行動と思われるものと異常な行動を比較し、飼育環境、脳の大きさと体重の比率、食生活などを観察した。
危険因子を特定するために、系統発生比較法(PCM)を使用し、繁殖センター(115種、10255ペア)の孵化率と個人宅(50種、1378個体)のステレオタイプ行動(SB)に関するデータを分析。
木の実や種、昆虫など、自然に近い食生活(SB)をしている鳥に対して、餌箱に餌が日々定期的に与えられるような単調で予測可能な生活環境下にいる鳥は、自分の羽をむしったり、噛んだり、食べたりする傾向が見られた。
このことは、鳥に刺激を与えるためには自然食が重要であることを示唆しており、加工食品を与えないようにというサインでもある。
この調査結果はデータとしてまとめた事実上の証拠だ。多くの者が「たぶんそうだろう」と思っていた事を、実際に検証し、データで証明された形となる。
この研究は、科学雑誌「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に掲載されている。
単調で予測可能な生活環境
鳥類獣医師協会(Association of Avian Veterinarians)によると、野生のオウムは、種類や季節によって差異はあるものの基本的には1日のうち40〜75%の時間を餌を探すために費やすという。
一方、家庭で飼われているオウムは、1日のうち30分から60分しか餌を探したり操作したりしない。オウムは、この余った時間を有意義な活動で満たす機会がないことが多いため、ストレスとなり異常行動に繋がっている。
この研究は、知的な動物が人間が用意する単調な飼育環境下で苦労することがあるという実証的な証拠で、この結果は、類人猿、象、鯨など、他の知的動物にも当てはまる可能性があると、この研究の筆頭著者であるゲルフ大学のジョージア・メイソン教授は語っている。
実際、動物園などで同じ動きを異常に繰り返す動物を見たことがある者も多いのではないだろうか。例えば我々人類でも、毎日時に刺激も与えられず、同じ場所で同じ食べ物を出されるような単調な生活環境ではストレスになるのは明白だ。
その種で同様の検証をしなければ証拠とはならないが、同じ結果になる可能性は高いだろう。
解決策
勿論、例外もあり、そのような単調な飼育下にうまく順応した個体もいなくはない。だが、多くの場合、その種の寿命を延ばすために、少しでも彼らが自然体でいられる環境を飼い主が作るのは飼育する上で必須であると言っても過言ではないだろう。
幸い、世の中には鳥に限らず、様々なペット用のストレス解消グッズが流通している。飼育している個体の特徴をよく調べ、その特徴にあったものを与えてあげたり、環境を作ると良いだろう。
そして、これから飼おうと思っている者は、飼う前に自分の住む場所やライフスタイルに合わないペットを選ばない、という事を前提に、購入を検討して欲しい。