動物
知られざる新奇恐怖症(ネオフォビア)の特徴が明らかに。

新奇恐怖症(ネオフォビア)は種族間の特徴ではなく個体ごとの安定した行動特性である可能性が示される。

世の中には知っての通り「毒性」というものがある。植物にも動物にもあり、種によっては耐性を持っていて毒にはならなかったりと多種多様だ。

だが、不思議に感じはしないだろうか。生命の殆どは何かを食べて生命活動を維持する。だが、中には毒性のものも多く存在する。

勿論、食べてしまい、不幸にも命を落とす者もいる。不思議と生物は毒性のものを避けて通っているのだ。

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新奇恐怖症(ネオフォビア)とは?


新奇恐怖症(ネオフォビア:Wikipedia英)という言葉を知っているだろうか。簡単に言えば「新しいものへの恐怖」だ。

例えば一昔前ならPCを触ったことが無い者が「触ったら壊れる」などと根拠のない恐怖心を抱いて触れようとしない等、新しいものはよく分からないから怖いと感じる者が一定数いた。

新奇恐怖症(ネオフォビア)は基本的には食に関するものが大半で、生物医学研究では、味覚の研究と関連した見方をするが、人間社会においては前述したように多岐にわたる。ある種の防衛本能と言っていいだろう。

日本ではしばしば「食わず嫌い」という言葉で主にネガティブな意味合いで使われ、時に脆弱な欠点と扱われ直そうとしたり、時にレッテルとして使われ嘲笑された経験を持つ者もいるのではないだろうか。

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進化的に有利


新奇恐怖症(ネオフォビア)は雑食動物、特に人間が、新しい食物を食べて危険を冒すか、それを避けて貴重な食物源を逃すかの選択を説明する現象である「雑食動物のジレンマ」に関連している。

少なくともある程度の食物に対する新奇恐怖症(ネオフォビア)を持つことは、潜在的に有毒な食物を食べることを避けることができるので、人類の進化において有利に働いた可能性があると考えられている。

慣れない刺激への探究心と未知のものへの恐怖心のバランスをとることで、新たな機会から得られる利益を最大化する一方で、毒性のある食物や潜在的な捕食者などから受ける新たな脅威のリスクを最小化することができた。

逆に考えれば、新奇恐怖症(ネオフォビア)を理解することで、生物が新しい環境や変化する環境にどのように適応していくのかを解明することができる。

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鳥類で検証


だが、新奇恐怖症(ネオフォビア)についてはまだまだ不明な事が多い。例えば、種によって、あるいは種の中でどのように違いがあるかについても分かっていない。

また、新奇恐怖症(ネオフォビア)の出現に最も影響を与える要因も曖昧だ。種族間の特徴なのか個体ごとに大きく違うのか育った環境によるものなのかよくわかっていない点が多い。

そこで、ネブラスカ大学のジェフリー氏とウォルフ氏は多数の研究室と協力してカケス、カラスなどの鳥類10種を対象に新奇恐怖症(ネオフォビア)の調査を行った。

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新奇恐怖症は安定した行動特性


各研究室では、特定の種の鳥に身近な食べ物を与える実験を行った。この実験では、ある種の鳥に馴染みのある餌を与え、その後、更に同じ餌を再び与える。ただし、2回目は見慣れない物や見慣れない餌を近くに置いた状態で与える。

見慣れない物や食べ物があると、馴染みのある餌に触れるまでの時間が大幅に長くなった場合、新奇恐怖症(ネオフォビア)であると判断する、というルールで検証した。

全10種の鳥類を分析したところ、、馴染みのある餌に見慣れない餌が近くにあると、例えばハシビロコウは普段の約4倍の時間をかけて触ることがわかった。

この恐怖心の大きさは、種によって大きく異なるものだった。尚、この結果は個体間で再現可能であり、新奇恐怖症は安定した行動特性であることが示された。

また、都市部に生息し、より大きな群れで生活し、さまざまな食物を貯蔵することで知られる種は、新奇恐怖症(ネオフォビア)が少ない傾向にあった。

この研究結果は「Current Biology」誌に掲載されている。

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新奇恐怖症(ネオフォビア)が進化にどう関わったのか


例えばドブネズミとハツカネズミは、人間が彼らを根絶するための方法(例えば、ネズミ捕り)を採用していたため、人間と共生するようになるにつれて、新奇恐怖症(ネオフォビア)のレベルが増加したと考えられている。

人も同様に、新奇恐怖症のレベルが増加した事が進化と繁栄に大きく貢献したと考えられている。

新奇恐怖症(ネオフォビア)の知見は、動物の認知に関する研究を改善し、種を野生に戻すための取り組みに役立つと考えられるばかりでなく、種の進化にも影響を与えている場合、その手の研究にも貢献できるかもしれない。

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参考文献

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Amet

旅行が趣味の団塊ジュニア世代。旅先で歴史を学んだり遺跡を見学したりその土地の食べ物を楽しむ事をライフワークにしています。本業はテクノロジー/マーケティング関係で情報収集と分析が専門です。

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