気候変動が人類にとって深刻な問題である事は周知の事実だ。世界的な干ばつなどを含む昨今の異常気象はその症状とも言える。
世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)が設立した政府間パネル(IPCC 参照:気象庁)の最新の報告では気温が2030年から2052年の間に1.5C上昇すると予想していたのを、2040年の間に修正した。想像を超えるスピードで地球温暖化が加速している。
温暖化を加速させている主な原因は温室効果ガスの排出、つまり人間によるものだ。だが、温暖化は人間だけに影響を及ぼす問題ではない。
魚のサイズが小さくなり数も減る
温暖化によって魚のサイズが小さくなり、数も減少傾向にある。これはJournal of AppliedEcologyに論文が掲載されているので興味がある方は参照してほしい。私たち日本人の食卓にも上がるタラやイワシ、ニシンなども成体の縮小が確認されている。
水温が高くなると、酸素量が減るだけでなく、代謝量が増えて酸素の需要が増えるため、魚体のサイズが大きくなりにくくなってしまう。
また、水温の上昇により一部の魚たちは自分達に適した場所に移動しようとするが、サイズが小さくなると魚のエネルギーを蓄えが乏しくなって移動距離が短くなり、気候の変化に合わせてより適した環境を求めることができなくなり、結果として数も減少する。
魚を捕食する動物にも影響が出る
ブリティッシュ・コロンビア大学の研究によると、カナダのハドソン湾における魚の数と大きさの両方の変化が、2025年までに加速することが分かった。
タラの資源は18〜35%、太平洋のイカナゴは45〜82%減少すると予想されており、これらを主食とするアザラシも結果的に減少する可能性が高い。
食べるものが無ければ他の物を食べるしかなくなる。エネルギーや脂質が豊富なタラからより小型の魚にシフトした結果、アザラシは「ジャンクフード」をより多く食べるようになるだろう。
野生動物がエサを採るには人が想像するよりも遥かにエネルギーを消費する。今までのように大きな魚を捕まえるのと同じエネルギー量で、この小さな魚をより多く捕まえるために、より多くのエネルギーを費やす必要が出てくる。
我々の生活に例えるなら、同じ働きをしても給与が年々下がっていく、と考えたら分かりやすいのではないだろうか。結果、安価で栄養価の偏った食生活になり、死亡率が上昇する現象と同じだ。
魚への影響は人間にもダイレクトに影響する
温暖化による野生動物への影響は大きいが、前述したように人間への影響も当然大きい。魚も人間の主食の一つだ。
温暖化によって海面が上昇し、住める土地が減っていき、魚も小さくなるため、より多くの魚を取るようになる。
その魚を主食とした海洋生物は減少し、魚の数も減少する。漁業を営むのも困難になるだろうし、魚の価格も高騰する。
温暖化は食生活にも悪影響を与えるし、山火事や水害などを頻発させ、経済にも打撃を与える、百害あって一利ないものだ。少しでも加速スピードを落とさなければ地球に住む全ての生体に明るい未来は無いだろう。