宇宙
月には80億人が10万年住める分の酸素が存在する!?

月には最低でも80億人が10万年ほど生活できるだけの酸素が存在する。

地球に暮らす生物の殆どは酸素に依存している。我々人類も例外なく、現在のところ地球で暮らす以外の選択肢はない。

だが、地球は万全ではない。小惑星衝突、気候変動、環境汚染など常に地球は危険に晒されている。

SFが好きな者なら地球以外の星に人類が移り住む選択肢を何度か見てきているのではないだろうか。例えばインターステラーなどもその1つだ。

地球の気候変動で人類滅亡の危機に抗うインターステラーはSF好きにも人気の作品だ。

移住計画と聞いてまず最初にイメージするのは火星ではないだろうか。水も存在する事が分かり、NASAでも火星に住むシミュレーション計画を実行している。

NASAが火星に住むためのシミュレーションに参加したい人を一般人から募集中
過去に水があったと考えられている火星。果たして住めるのか、住んだら人はどうなるのか。 地球はいつまで人が住めるか分からない。地球以外に住む、という選択肢はある意味で人類にとっての希望であり叶えるべき夢で、過去から現在に至るまで、漫...

移住計画の対象は火星だけではない。どんなプロジェクトでも最低でもプランAとプランBは用意するのが一般的だ。

火星がプランAだとするなら、プランBは月ではないだろうか。地球から最も近く、物資を運びやすいという理由もあるが、実は月には大量の酸素が存在するのだ。

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月に酸素を供給するプロジェクト


近年、宇宙開発の進展に伴い、宇宙資源の有効利用を可能にする技術に多くの時間と資金が投入されている。その中でも特に注目されているのが、「月面で酸素を生産する方法」の模索だ。

オーストラリア政府は2018年12月11日、オーストラリア宇宙庁(ASA)を南オーストラリア州アデレードに創設、2020年2月19日にASAの本庁舎を正式に開所した。

2021年10月、ASAとNASAはアルテミス計画に基づいてオーストラリア製のローバーを月に送り、月面で呼吸可能な酸素を供給する計画の為に月の岩石を収集する契約を結んだ。

NASA, Australia Sign Agreement to Add Rover to Future Moon Mission
International and commercial partnerships are a critical component of NASA’s long-term plans on and around the Moon under the Artemis program.

このローバーは、月のレゴリス(細かい塵の層:Wikipedia)を収集し、NASA運営のISRU(in-situ resource utilization)システムに転送する機能が搭載されており、早ければ2026年に月に送られる予定だ。

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なぜ酸素供給の為に月の石を収集するのか


月には大気がある。だが、非常に薄く、ほとんどが水素やネオン(原子番号10の元素)、アルゴン(原子番号18番の元素)で構成されており、現状では人が住める環境には程遠い。

だが、月には多くの酸素が存在している。月の酸素はガス状ではなく、岩石やレゴリスの中に閉じ込められている。

この閉じ込められた酸素を分析する為の計画がASAとNASAの計画している月面の岩石収集プロジェクトだ。

月の鉱物やレゴリスから酸素を供給する研究は2020年に「Science Direct」誌に論文が掲載されているので参照して欲しい。

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鉱物には酸素が含まれる


月だけではない。酸素は、我々の身の回りにある鉱物の多くに含まれている。そして月は、そのほとんどが地球と同じ岩石でできている。

シリカ、アルミニウム、鉄やマグネシウムの酸化物などの鉱物が、月の地形の多くを占めており、これらの鉱物にはすべて酸素が含まれているが、当然ながら人間の肺で利用できる形ではない。

もし、レゴリスから酸素を取り出すことができたら、月で人類が生活する程度の供給が可能なのだろうか?

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大量のエネルギーが必要


月のレゴリス内にある酸素は鉱物と強固に結合している。この結合を解くには、多くのエネルギーが必要だ。

電気分解を知っている者ならピンとくるのではないだろうか。アルミニウムなどの製造によく使われているプロセスだ。

液体状の酸化アルミニウム(通称アルミナ)に電流を流し、アルミニウムと酸素を分離する。このとき、酸素は副産物として発生するが、月では酸素を作るのが目的ゆえにアルミニウムが副産物となる。

言うは易しだが、大きな問題がある。この方法は非常に多くのエネルギーを消費するのだ。人が生きている限り持続的に酸素が使われるため、酸素供給を持続するには太陽エネルギーや月で利用可能な他のエネルギー源でまかなう必要がある。

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設備を月に送る計画

オーストラリアのアルミナ(酸化アルミニウム)製油所。現状、月で酸素を生成するには、このような施設を月に作る必要がある。(出典:The Conversation


このように、レゴリスから酸素を抽出するためには、かなりの産業設備が必要だ。地球上にある設備を月に移動させ、この設備を月で動かす為のエネルギー発生設備も必要になる。

ベルギーに本拠地を置くベンチャー企業のSpace Applications Services社は今年初め、電気分解による酸素製造プロセスを改善するための実験炉を3つ建設中であると発表した。

彼らは、欧州宇宙機関(ESA)のISRUミッションの一環として、2025年までにこの技術を月に送ることを目指している。

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月ではどのくらいの酸素を供給できるのか


月に酸素があり、月で酸素を作り出す計画もある。では、肝心の酸素量はどうなのか。作れたとしても微量ではどのみち移住先としては選択肢にはならない。

答えは「十分すぎるほどある」だ。

月のレゴリス1立方メートルあたりには平均して1.4tの鉱物が含まれており、その中には約630kgの酸素が含まれている。

人間は1日に約800gの酸素を吸わないと生きていけない。つまり、630kgの酸素があれば、人間は約2年間(もしくはそれ以上)生きられることになる。

月のレゴリスの平均的な深さを約10メートルと仮定し、そこからすべての酸素を取り出すことができると仮定しよう。この場合、80億人が10万年ほど生活できるだけの酸素が得られる計算になる。月の表面部分だけでも十分な酸素量だ。より深くには更に多くの酸素が眠っている。

勿論、そう単純に順調に事が進むわけではない。供給効率も良くする必要があるし、エネルギーの持続的供給、水分や食料など「移住」はまだほど遠い。だが、酸素が得られるというだけでも火星と並べる移住先候補と言えるのではないだろうか。

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そうは言っても地球がベスト


火星や月への移住が可能なら、人類の未来は暗くはない。だが、そうは言ってもやはり人類にとって地球がベストだ。

可能であれば現在の気候変動を止め、地球を人類が暮らせる環境に維持する事が最優先である事に変わりは無い。

そのために人類全員が協力して気候変動と真摯に向き合う必要があるだろう。

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参考文献

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Amet

旅行が趣味の団塊ジュニア世代。旅先で歴史を学んだり遺跡を見学したりその土地の食べ物を楽しむ事をライフワークにしています。本業はテクノロジー/マーケティング関係で情報収集と分析が専門です。

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