日本は勿論、他の多くの国でもいろいろな問題を抱えている。貧困やジェンダーギャップ、虐待、失業や病気、インフラや犯罪などなど様々だ。
その国ならではの問題もあるし、人間特有の問題もあるが、政治などを介して皆それぞれの方法で問題を解決しようとしている。
世界で特に問題となっているのが「肥満」だ。世の中には多くのダイエット本やダイエット器具、方法やサービスなどが存在する。だが、肥満は増加する一方だ。
解決法はあれど解決しないジレンマ
方法は非常に多くあるが、その事がダイエットを成功させるのが困難である事を物語っている。
例えば貧困で日々多忙なため、ダイエットに費やす時間が無い、食生活の改善が難しい、ダイエットがなかなか続かない等、問題を解決する方法があるにも関わらず問題が解決しない。
肥満は非常に厄介であり、放置すると糖尿病なども発症し、透析に繋がるなど放置できない社会問題だけにより良いソリューションが求められている。
世界で初めて減量装置を開発
ニュージーランドのオタゴ大学と英国の研究者が、世界的な肥満の蔓延にストップをかけるため、世界で初めて磁気デバイス減量装置を開発した。
これは上下の奥歯に装着する口腔内装置で、歯科医師に装着して貰う事を想定されている新しいダイエット法へのアプローチとなる。
この装置を付けると口を2mm程度しか開けられなくなり、食事は流動食に制限されるが、自由に会話する事も可能で、呼吸の制限もなく、安全性が保たれた減量デバイスだという。
オタゴ大学があるダニーデンで行われたテストでは参加者は2週間で平均6.36kgの減量に成功し、今後も続ける意欲を示した。
この装置の研究結果に関しては「BDJ」誌に詳細が掲載されている。
効果的で安全、且つリーズナブル
主席研究員のオタゴ大学健康科学部副学長ポール・ブラントン教授は、この装置は肥満と闘う人々にとって効果的で安全、かつ手頃な価格のツールになるだろうと述べている。
この装置は歯科医が装着するものではあるが、緊急時には使用者が解除可能で、しかも繰り返し装着・取り外しが可能なため、ランニングコストの心配も少ない。
ブラントン教授はこの装置について以下のように述べている。
「これは新しいダイエット習慣を確立させ、一定期間低カロリーの食事を遵守することを可能にし、ダイエットを成功に導くものです。非侵襲的で可逆的、かつ経済的で、外科的処置に代わる魅力的な方法です。この装置には副作用がないのです」
世界における肥満の現状
最近の研究では、世界で19億人の成人が太り過ぎており、6億5000万人が肥満であり、太り過ぎや肥満であることが原因で、年間約280万人が死亡していることが明らかになっている。
2030年には世界の成人人口の約57%が太り過ぎまたは肥満になると推定されており、個人や国ではなく、世界全体の問題となりつつある。
また、厄介なことに肥満はルッキズムにおける差別をも生む。恥ずかしさ、抑うつ、自尊心の喪失などの心理的な症状が現れ、スティグマや差別とともに摂食障害に苦しむこともある。
このような精神障害を引き起こすと更に現状のような健康体である事が条件となる多くのダイエット法は選択肢から外れ、方法が限られてしまうため肥満は悪化する可能性も出てくる。そういった意味でも、現状のダイエット法とは異なるアプローチが必要とされていた。
外科的な肥満手術は?
そういった者への最終的な手段として外科的手術の存在は大きな役割を果たしているが、この「世界的な流行」の解決のために頼ることは難しい。理由は誰しもが想像できる通りの理由、つまりは金銭的問題だ。
外科的手術で肥満を解消した患者はその代償として一生その結果を背負って生きていかなければならず、それは非常に不愉快なものになりうる。場合によっては前述したような精神障害を引き起こす可能性も否めない。
このデバイスは外科手術に頼る必要がある者、例えば他の疾病の手術を受ける前に体重を減らさなければならない者や、体重を減らすことでリスク軽減が期待できる糖尿病患者にとって、特に有用なものだろう。
手軽さ、低コスト、安全性
このデバイスの優れた点は、患者に装着してから2~3週間後に磁石を取り外すことができる点だ。その後、食事制限を控えた期間を経て、再び治療に入ることができる。
栄養士のアドバイスのもと、段階的に減量することで、長期的な減量目標を達成することができる。患者には緊急時に装置を開けるための道具が渡されるが、テスト参加者のは誰も使う事はなかった。
彼らは皆、この装置を許容できると述べたが、その後も改良を重ね、機能的な快適さと美観を向上させ、小型化にも成功している。
とはいえ全てにおいて完璧な方法ではない。食べたいものを食べられないというのは大きなストレスになる上に、流動食は不慣れなものにとってよりストレスになる。
ストレスを溜めすぎれば装置を外した時の反動で暴食に走る恐れもあるし、ストレスによってDVに進展しないとも言い切れない。それに、自分で外せてしまうので意思が弱い1人暮らしの者にはあまり向いていないだろう。
入院とのセットで使うなど、患者に合わせた使い方も求められるため、医師と歯科医との連携も必要になるだろう。