自然
地球はかつてマグマの海だった。その証拠が見つかった。

地球誕生から間もない頃はマグマの海だったという証拠をグリーンランドで発見。37億年前の岩石から。

地球は気候変動の最中にあるが、基本的には水と緑に満たされた生命のオアシスだ。だが、地球が誕生して最初からそのような環境だったわけではない。

最初は過酷な環境だった。今から約45億年前の、誕生してから5千万年の間、地球の地表はマグマで覆われていて、とても生命が生きていける環境では無かった。

これは月も同じでしばらくの間は地表がマグマで覆われていた事が明らかになっている。

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地球も同様にマグマの海だったが、地球が冷却され、マグマの海が結晶化して固体の岩石になり、その結果、地球の構造や表面の化学的性質、初期の大気の形成に決定的な影響を与え今日に至る。

これには科学的根拠があるが、確たる証拠はプレートテクトニクス(大きな大陸移動)の荒波によって失われたと考えられていた。

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グリーンランド南部で証拠を発見


ケンブリッジ大学地球化学部門のヘレン・M・ウィリアムズ氏が率いる研究チームはプレートテクトニクスによって失われたと考えられていた、地球がマグマの海であったとする化学的痕跡をグリーンランド南部の37億年前の岩石から発見した。

グリーンランドは、地球が溶けた過去の痕跡を探すのに適した場所だと考え、チームを派遣した。今回のサンプルはグリーンランド南西部のイスア超地殻帯で採取されたものだ。

イスアの岩石は、一見すると海底にある現代の玄武岩と同じように見えるが、実際は37億年から38億年前のものと考えられている世界最古の岩石だった。

この証拠の詳細は「SCIENCE ADVANCES」誌に掲載されている。

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地獄だった地球の始まり

マントルの構造。(出典:Wikipedia


地球は、混沌とした初期の太陽系の産物であり、地球と他の惑星の間で何度も壊滅的な衝突があったと考えられている。地球の形成は、約45億年前に火星サイズの星と衝突し、その結果、地球の月が形成されたことで頂点に達した。(論文はこちら

この衝突は、地球の地殻と内部のマントルを溶かすエネルギーを発生させたと考えられており、惑星規模の大量の溶融した岩石が形成され、深さ数100kmもの「マグマの海」が形成された。

一方で、現在の地球は、地殻は完全に固体で、マントルは「プラスチック固体」と呼ばれ、初期のマントルの液体マグマとは異なり、ゆっくりとした粘性の動きをしている。

衝突後に地球が冷えると、深いマグマの海が結晶化し、現在の地球の形へと進んでいく事になった。冷えたマグマの海から噴出した火山ガスは、生命を育む大気の形成と組成に極めて大きな影響を与えた可能性があると考えられている。

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地質学的探索

地球がかつてマグマの海であった証拠を見つけるのは非常に難しい。そもそもマグマの海が形成されたのは40億年以上前で、前述通りその頃の証拠はプレートテクトニクスによってほぼすべて失われてしまっている。

しかし、化学的痕跡そのものは地球の深部に保存されている可能性がある。地球の冷却期に固まった結晶は、密度が高く、マントルの底に沈んでいたはずだ。

そう考えた科学者たちは、これらの鉱物の残骸が、地球のマントルコア境界の奥深くに保存されているのではないかと仮説を立てている。とはいえ、もし存在していたとしてもアクセスできないため採取は難しい。

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なぜ証拠を見つける事が出来たのか


ではなぜ今回証拠を発見できたのか。

イスアの岩石を分析した結果、ユニークな鉄の同位体組成を発見した。これは、岩石が形成されたマントルの領域が、地表から700km以上離れた地球内部で高い圧力にさらされていたことを示している。

つまり、マグマの海で結晶化した鉱物があったと考えられる、人間がアクセス不可な場所だ。なぜ地中奥深くにあるハズの結晶が地表にあったのだろうか。

その答えは、地表に火山岩が現れる仕組みにある。

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火山岩が出来る仕組み


火山岩が生成される仕組みは、半固体のマントル領域が熱せられて溶けると、地殻に向かって浮力で上昇し、マグマが地表に到達して冷えると、最終的に火山岩が生成される、というものだ。

つまり地表の岩石の化学的性質を調べることで、岩石を形成するために溶融した物質の組成を探ることが可能だ。イスアの岩石の同位体組成を調べると、地球の内部で結晶化と再溶解を繰り返す、いわば蒸留のような過程を経て地表に出てきたことがわかった。

グリーンランド南部にあったこの岩石には、マグマに覆われていた過去の地球と関連する化学的特証拠を残していたのだ。

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他の火山の調査にも期待


今回の研究成果は、地表の火山岩に含まれるマグマの海の結晶の特徴を示す、初めての直接的な地質学的証拠となった。

研究チームは、世界中にある他の古代の火山岩が、地球のかつてのマグマの海についてより多くのことを教えてくれるのか、それとも運よく一回限りの手がかりに奇跡的に遭遇出来たのかを調査する予定だ。

もし、他の火山が同じような証拠を含んだ火山岩を噴出していたとすれば、ハワイやアイスランドなどにも、地球の太古の歴史を物語る同位体を新たに発見できるかもしれない。

今後、さらに多くの原始岩が発見される可能性があり、それによって地球の誕生の秘密が付き明かされるかもしれない。

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参考文献

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Amet

旅行が趣味の団塊ジュニア世代。旅先で歴史を学んだり遺跡を見学したりその土地の食べ物を楽しむ事をライフワークにしています。本業はテクノロジー/マーケティング関係で情報収集と分析が専門です。

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