地球は現在深刻な気候変動による温暖化現象の最中にある。
否定的な意見も未だに見られるが、8万8000件もの科学論文のうち99.9%以上が認めており、「原因は人間にある」という点に同意している。
数年前に比べて、気候変動に関するニュースが目や耳によく入るようになった。活動家のグレタ氏が目立つのも、それだけ気候変動に世界が関心を向けているというのも大きいだろう。
非常に危機的な状況にあるが、内容が大きすぎてどうもピンと来ない、という者も多いかもしれない。
気候変動が我々の生活を脅かす
気候変動は自分にはあまり関係がない、生活を脅かすころには寿命を迎えてる。と考えているケースは少なくない印象だが、実際は既に気候変動の影響がすぐそばまで迫っている。
例えば2021年は非常に多くの山火事が世界中で発生した。気候変動によって気温が上昇し、地中の水分をも蒸発させ、山火事を誘発する事は既に立証されている。山火事は人の命の危険ばかりではなく、動物や植物の命をも奪う。
更に山火事の処理に多額の税金が使われる。放置すれば食卓に影響が出る上に国が対応に追われるため、税金も上がりかねない。更に山火事は大量の炭素を放出し、気候変動をより悪化させる。
地中の水分を蒸発させるため、世界的な干ばつが更に深刻化している。日本は水が豊富に思われているが、毎年のように異常気象となり、貯水量の減少も懸念されている。
海水の温度も上昇しており、魚たちの動きに異変が起きている。漁獲量は減るだけでなく、魚にとっての餌も減り、結果的に体が小さくなる。日本では魚介類も重要な食材とする国だが、身が小さく値段も高騰する。
更に現在も日本を直撃しているのが豪雨などによる洪水被害だ。気候変動により局所的に降雨量が増加し、世界各地で洪水が起きている。
気候変動は決して他人事ではなく、我々の生活を今現在も脅かすとても身近なもので、世界全体で解決しなければならない問題だ。
そして今、新たな問題が懸念されている。それが永久凍土の融解だ。
永久凍土の融解による悪影響
永久凍土は北半球の大陸の約20%に広がっている、北極圏にある2年間以上にわたり継続して温度0℃以下をとる地盤のことで何千年も凍結している場所もある。
永久凍土の分布と深度を計測することで、アラスカとシベリアの永久凍土の融解が報告されたのは既に20年ほど前の2001年の事だ。融解は深刻な状況にあり、その速度は加速している。
融解する事で何が起きるのだろうか。永久凍土には、植物や動物が分解される前に凍ってしまった、炭素を含む遺骸が存在する。
氷の下に眠っていたメタンガスや二酸化炭素が大気中に放出され、地球の気温上昇を悪化させるのも非常に問題だが、最も懸念されているのは地中に眠る未知のウイルスや菌が放出されたり、放射性廃棄物がばらまかれる、という点だ。
2021年11月現在、日本のコロナパンデミックはやや落ち着きを見せているが、世界ではまだまだ猛威を振るっている。このようなパンデミックを引き起こすウイルスが眠っている可能性がある。
永久凍土は融解し、未知のウイルスが放出され、動物に感染し、その動物を人が食材にする。今現在のコロナパンデミックの出どころは未だに不明だが、動物が媒介となるのはペストなどの過去のパンデミックでもあったようにごく自然な流れだ。
このたび、この永久凍土の融解の危険性がある地域を衛星によって特定したとの報告があった。
衛星で危険エリアを特定
欧州宇宙機関(European Space Agency)、通称ESAはCopernicus Sentinel-1およびSentinel-2ミッションから得られたデータと人工知能を用いて、北極圏の全体像を把握し、今後30年間で危険にさらされるコミュニティやインフラを特定した。
今回の研究は、「Environmental Research Letters」誌に掲載されており、融解しやすい北極圏の土地に人間が存在した痕跡、すなわち「ヒューマンフットプリント」が過去20年間で15%増加したことを説明している。
ESAのClimate Change Initiative Permafrost Projectのメンバーであるアネット氏は以下のように説明する。
「1997年までさかのぼったClimate Change Initiativeの永久凍土の地表温度のデータを用い、2050年までに深さ2メートルまでの地表温度が0℃を超える、つまり融解しうる場所を予測できました。その結果、現在、永久凍土の上にあり、北極圏の海岸から100km以内にあるインフラ(地域社会が頼りにしているレベルのインフラ)の55%が影響を受ける可能性がある事が分かったのです。」
ESAとそのメンバー国によって開発されたClimate Change Initiativeは、地球システムの21以上の重要な構成要素に関する強固で長期的なグローバル衛星データセットを生成可能だ。
高度なレーダー装置を搭載したCopernicus Sentinel-1ミッションの高解像度データと、高性能カメラ装置を搭載したCopernicus Sentinel-2ミッションのデータを、人工知能とともに使用し、永久凍土の融解に脆弱なコミュニティを特定する事に成功したのだという。
永久凍土にも人は住む
前述通り、融解しやすい北極圏の土地にはこの20年で人口や人の活動が増加している。例えば石油やガスの採掘に関連するインフラに関わる者たちだ。彼らは永久凍土の海岸沿いで活動する。
永久凍土の融解により、これらの沿岸は急激な変化が起き、危険に晒されている。豊かな生物多様性を脅かし、地域社会に圧力をかけるものだ。
2016年、シベリアで永久凍土の融解により、炭疽菌に感染した70年前のトナカイの死骸が露出、子供が感染して死亡し、更に他の数人にも影響が及んだ事件のように、融解が進めば更に危険な菌やウイルスが放出され、パンデミックが再来する可能性もある。
世界各国はもちろん、世界中の個々人が気候変動と一刻も早く真剣に向き合う必要があるだろう。