人は猿から進化したと考えられている。現代の猿が道具を使うように、太古の猿も道具を使っていた。
猿人(アウストラロピテクス等)も「人類」とするなら、石器を始めて使用したとされる250万年ほど前が「初めて人類が道具を使った」と考えられる。
この度、そんな「道具を使い始めた人類」が服を作る目的で骨を道具として使う為に加工してした、つまり「毛皮を服に加工するという明確な目的を持って道具を作成していた」事が判明したのだという。
発掘された道具を詳しく調査
2011年にモロッコの洞窟から60種類以上の骨製のツールや、クジラ、イルカなどの鯨類の歯が発掘された。
これはおよそ12万年前のものと判明している。猿人、原人(北京原人等)、旧人類(ネアンデルタール人等)と進化し、新人類(クロマニョン人等)となって数万年を経た時期だ。
アリゾナ州立大学の古人類学者カーティス・マリアン氏と同大学の博士課程に在籍するエミリー・ハレット氏らがこれらの出土した道具を詳しく調査した。
衣類を作るために開発したツールと判明
今回の調査の結果、この洞窟で見つかった道具は、当時の人類の衣類を作る目的で加工された道具であった事が判明、iScience誌にて結果が報告された。
基本的に、衣服に使われた毛皮やその他の有機物は記録に残りにくく、衣服の起源はまだよくわかっていない。状況証拠からくる予測ではあるものの、現在まではネアンデルタール人が服を着ていたとされている。
しかし、この度の研究結果で「人類が服を作る目的で道具を加工した」のが判明したのは大きな発見だ。
明確な意志を持って道具を加工して使っていた、という事になる。
確かな証拠
洞窟の中にあった約12,000個の骨片の中から、人類が道具として使用するために加工した動物の骨が60個以上含まれていたと同時に、肉食動物の骨に切断痕の一定パターンが存在する事を確認した。
これは、当時の洞窟の住人が、肉としてではなく、毛皮を取るために動物の皮を剥いでいたことを示している。
この道具を同じく考古学的な記録として残っている他の道具と比較したところ、皮革加工用の道具と同じ形状と使用痕があることを発見したのだ。
ハレット氏は、「皮を剥いだ跡のある肉食動物の骨と、毛皮処理に使われたと思われる骨製の道具の組み合わせは、考古学的記録の中で最も古い衣服の証拠として、非常に示唆に富むものです」と述べている。
更なる発見
また、発掘された骨の中にはクジラやイルカの歯の先端が隠されており、石器を削るための道具である圧力フレーカーの痕が残っていた。
今回の発見は、人類が海洋哺乳類の歯を使用したことが記録されている中で最も古いものである事も確認された。これは北アフリカの更新世において唯一の海洋哺乳類を使った道具だ。
骨器のような複雑な技術は、現生人類の原点である水生適応にのみ関連していることが、またしても明らかになったわけだ。人類の進化には「海岸」が非常に重要だった事の証左となる。
洞窟の骨器は、およそ12万年前までに、ホモ・サピエンスが骨を使って正式な道具を作り、革や毛皮の加工など、特定の作業に使うようになったことを示したものになる。