歴史・考古学
新品同様の5世紀の宝石が発掘された。(出典:Středočeský kraj.

チェコで5世紀後半のものと思われる新品同様のボヘミアンジュエリーを発見。

ボヘミアンという言葉を聞いて何を連想するだろうか。著者は真っ先にファンであるQueenのボヘミアン・ラプソディを思い起こす。

Queenのボーカルであったフレディ・マーキュリーのこの楽曲は、彼の半生を描いた映画のタイトルにもなった。公開当時はSNS等でも非常に大きな話題を呼んだため、ボヘミアン・ラプソディという名前だけでも知っている者も多いのではないだろうか。

Queenのボヘミアン・ラプソディ。映画化が大きな話題を呼んだのは記憶に新しい。

ラプソディは「狂詩曲」を指す。ではボヘミアンは何だろうか。ボヘミアンとは、もともとチェコのボヘミア地方に多く住んでいたラマ、つまりジプシーの事を呼ぶ言葉だった。

ジプシーは知っての通り特定の地に足を付けず、必要に応じて放浪する少数民族だった。いつしかボヘミアンはラマ達のように社会の慣習に捕われず放浪する芸術家の代名詞のようになり,のちに同様の知識人や放縦生活者まで広く含む呼称となった。

そんなボヘミアンの由来となったチェコのボヘミア地方で珍しい宝石が発掘されたと言う。

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非常に美しいボヘミアンジュエリーを発見

見つかった宝石。地中に埋まっていた5世紀の物とは思えない美しだだ。(出典:Středočeský kraj.


チェコ共和国のラコフニーク博物館の考古学者が、5世紀後半と思われる珍しいボヘミアの金の指輪と留め具(バックル)を発見したと発表した。

2020年の夏、西ボヘミアの町ラコフニークの近くで活動していたアマチュアの金属探知機愛好家たちによって発見されたもので、エキゾチックな貴石がふんだんに使われている美しいジュエリーとなっている。

発見は今週になって発表されたもので、考古学者チームは約1年間、このジュエリーやバックル等にX線スキャン、コンピューターによる断層撮影、顕微鏡や、分光器などを使い調査を行なっていた。

宝石はガーネットとアルマンディン(鉄とアルミニウムを含むガーネットの一種)だという。このジュエリーは非常に保存状態が良く、まるで新品のような美しさだった。

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インドかスリランカで産出された可能性

宝石に埋め込まれたガーネットやアルマンディンはインドやスリランカのものだという。(出典:Středočeský kraj.


考古学者チームの調査に協力したパリのソルボンヌ大学の専門家によると、このガーネットとアルマンディンは、インドかスリランカで産出されたものであると考えている。

チェコという場所での発掘、5世紀という時期、そして宝石が遠く離れたインド、或いはスリランカのものであるというこれらの特徴から、この宝石はヨーロッパで最もユニークなものの一つであると位置づけた。

年代に関しては、481年に亡くなったベルギーのフランク人サリ族の王であるキルデリク1世(Wikipedia)の墓から出土した品々など、他の発見との類似性から、この指輪の正確な年代を割り出した。

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貴族のものか

王族のものだったとすれば大きな発見だ。(出典:Středočeský kraj.


カレル大学の民族移動の専門家であるヤロスラフ・ジジク氏は、ジュエリーの所有者はおそらく貴族であると主張している。

現代ヨーロッパでは他に5つしか発見されておらず、それらは常に社会的に最も高い地位にある人物、場合によっては「大使や王」、あるいは王族に近い人物である可能性がある。

なぜインドやスリランカのものが遠く離れたチェコに、しかも5世紀のものがあったのか。これにはいくつかのシナリオがある。

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考えられるシナリオ

展示は来年を予定している。 (出典:Středočeský kraj.


1つ目のシナリオは戦利品の一部である可能性だ。誰かが戦利品をラコフニーク地方に運び埋めた、或いは落としたか、というもの。

2つ目は貿易だ。香辛料貿易でも分かるように、紀元前から、古代ギリシャ・ローマともインドと香の道を通して取引を行っていた。

そして3つ目は盗掘にあった可能性だ。誰かがインド、或いはスリランカ、または別の場所から盗み出し、理由があって地中に埋めた、或いは病気等で倒れた、地形の変化で隠し場所が分からなくなったという可能性だ。

この疑問に関してはまだ情報が全くない。今後の研究で何かしら明らかになるだろう。

この新品同様の5世紀のジュエリーは来年の夏にチェコのラコブニークにあるトマーシュ・ガリーグ・マサリク博物館で展示される予定だ。

金属探知機は最も手間のかからないアマチュア考古学者への道だ。高性能なものも今は手に入れる事が出来るため、誰にでも発見者のチャンスがある。

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参考文献

歴史・考古学
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Amet

旅行が趣味の団塊ジュニア世代。旅先で歴史を学んだり遺跡を見学したりその土地の食べ物を楽しむ事をライフワークにしています。本業はテクノロジー/マーケティング関係で情報収集と分析が専門です。

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