金銀財宝と呼ばれるように、金の価値は、現在は勿論の事、古来からもずっと貴重なものとして扱われてきた。
少量でも美しく輝くその様は人を魅了し続けている。例えば古代エジプトでも金はファラオの装飾などに使用されたり古代ローマ時代では価値のあるものとして貨幣に使われた。
そんな金の財宝がデンマークで見つかったとヴァイレ美術館にて報告があった。
金属探知機で発見
アマチュアの考古学者であるOle Ginnerup Schytz氏は金属探知機を購入したばかりで、昔のクラスメートと一緒にユトランド半島のイェリングから8kmほど離れた畑付近を散策、探知機が反応を示し発見に至った。
発掘されたのは去年の12月、クリスマスイブの数日前の事だ。調査等を兼ねてこの度、公開、発表された。
これはデンマークでも歴史的に最大級の金財宝との事。小さな受け皿ほどの金としては大きなサイズは非常にユニークで珍しいものだった。
現在この出土エリアは美術館の考古学者が国立博物館の専門家と協力し、デンマークの文化庁の資金援助を受けて発掘している。場所の詳細は伏せられているそうだ。
およそ500年代のものか
埋蔵された時期はおよそ1500年前で、総重量は1kg(945g)弱だ。今の金の価値でも純金1kgは400万以上。当時の価値を考えると相当の価値であったことがうかがえる。
考古学者の調査によると、当時(鉄器時代)にこの地で権力のあった裕福な男性が長屋のような場所に埋めたのではないかと推測されている。
理由は不明だ。戦争に備えたか、或いは神へ捧げようとしたか、何かしらの理由で埋めたと思われる。
興味深いデザイン
出土した金のメダルのデザインはどれも興味深いものだった。当時の支配者を象徴するようなモチーフやルーン文字が刻まれているものや、北欧神話を意味するものなどだ。
また、ある1つの出土品には薄い金色の苞に三つ編みの男性の頭が描かれ、その下には馬と鳥が描かれていた。更に、「houaʀ」と読めるルーン文字が刻まれている。
これが「覇者」を意味しているのは確実だが、北欧神話の覇者であるオーディンを指しているのではないかとも考えられる。
当時は「最悪の環境」だった
1500年前といえば、西暦500年あたり。この時代、特に536年はヨーロッパにとって最悪の環境だったと考古学者であり中世の歴史家であるマイケル・マコーミック氏は過去のインタビューに答えている。詳細は以下で確認出来る。
様々な観測データによれば当時は噴火、異常低温、記録的な大雨などの異常気象により飢饉、ペストなどの疫病、それに伴う戦争など、歴史的に見ても「最悪」だったという。
これは世界各地で確認されているものであり、地球の気候変動が関わっている為、デンマークでも例外ではなかったと思われる。例えばデンマークより北の北欧、スカンジナビア半島では火山灰が空を覆い、太陽を隠す現象があたっと推測されており、神々をなだめる目的で財宝を捧げた可能性もあるだろう。
いずれにしても今回の発見は歴史的に見ても非常に価値の高い発見となった事は確かだ。これらの出土品は2022年2月3日に予定されているヴァイレ美術館の「ヴァイキング展」の一部として披露される予定だ。