あなたはUFO、つまり地球外生命体を信じているだろうか。世界中で目撃情報や映像が残っているが創作や虚偽報告も入り交じる上に科学的に存在の証明が出来ず、陰謀論も少なくないのは知っての通りだ。
フェルミのパラドックス、という物理学者エンリコ・フェルミ氏による指摘がある。地球外文明の存在の可能性の高さと、彼らの文明との接触の証拠が皆無である事実の間にある矛盾の事を指す。
確かに地球外生命体を証明するエビデンスは今のところ無い。だが、エビデンスが無いから存在しない、と結論付けるのは誤りだ。地球外生命体を証明エビデンスが無い事は存在しない事の証明にはならない。
宇宙には2兆もの銀河が存在すると推測されている。宇宙の始まりは138億年前と言われている。そして地球が生まれたのが46億年前だ。いくら地球に生命体が出来たのが多くの奇跡の結晶であるとはいえ、その間の92億年で地球以外に生命体が生じない可能性が無いとは言えない。
1561年のニュルンベルク上空の天文現象
「1561年のニュルンベルク上空の天文現象」というのを知っているだろうか。1561年4月、ドイツのニュルンベルクで謎の光と大きな音を聞いたニュルンベルクの住民の殆どが家から出てきて空を見上げた。
大勢が一斉に何かの空中戦のようなものを目撃したと言う。これは幾人かの証言などではなく、多くの住民が同じ現象を目撃しておりニュース記事にもなった紛れもない事実だ。このニュース記事はチューリッヒ中央図書館(Zentralbibliothek Zürich)に印刷物と線画で保存されている。
以下はWikipediaより当時の様子を語る住民たちの声を引用する。
1561年4月14日夜明けころ、ニュルンベルクの住民には、彼らが空中戦とするものが見え、それにつづいて大きな三角形の物体が出現し、それから都市の外側でおおきなクラッシュ音があった。 目撃者らは、頭上を不規則に移動する、幾百もの球、円柱、その他の変わった形の物体を観察したと主張している。
ニュース記事は、さまざまな形の物体を記述し、そのなかには、複数の十字、複数の球、2つの細い月、黒い槍、そして管状の物体が含まれるが、管状の物体から夜明けにいくつかのより小さなまるい物体が現われ高速で飛んだ。
この現象は1時間ほど続いた。この物体は1つや2つではなく数百もの数が目撃され、中には地面に激突するものもあったという。最終的に空中戦を広げていたそれらは煙と共に姿を消した。
ニュース記事を書いたハンス・グレーザーはこの現象を「その恐ろしい何かは、朝の空を円筒状の物体が埋め尽くし、そこから黒、赤、オレンジ、青白の球体が現れ、飛び交っていた。球体の間には、血の色をした十字架があった。この恐ろしい光景を『多数の男女』が目撃したという。その後、黒い槍のようなものが現れた。」と表現している。
大勢のニュルンベルク市民によって同時に同じ現象が目撃されたこの事実はいったいどのように説明できるだろうか。
UFOなのか、自然現象なのか
この怪奇現象は既に400年以上もの長い月日をかけて既に多くの者に考察されているため、ここでは考えられる可能性の記載は割愛する。
想像できるように、今までこの現象を信じない者は多くいた。流星や彗星であろうとか、誤報である、町おこし目的の複数人の虚言という意見もあったが、現在のところ懐疑派では「幻日」ではないかという説が有力だ。
グレーザー氏の詳細な記述を見る限り、自然現象とは思えない。だが、複数人が見た珍しい自然現象が伝聞されるうちに話に尾ひれがついた結果ではないか、というのも否定できないのも確かだ。何より、現代のように動画や写真、地上に落ちた際の痕跡など動かぬ証拠がない。
UFOである証拠もないし自然現象である証拠もないため、現在のところ真相は不明だ。
同様の現象は他でも
1561年からさらに5年後、今度はスイスのバーゼルでも同じような出来事があった。1566年のバーゼル上空の天文現象(Wikipedia)でも同様に集団で空の怪奇現象が目撃された。登り始めた太陽の前の空で無数の赤と黒の球体同士が戦っていたのだと言う。
更に時は流れ150年後の1697年。今度はドイツのハンブルグでも上空に巨大な光る車輪が2つあるのを多くの者が目撃した。
残念ながら前述したように当時を物語る証拠は新聞以外にない。当然、様々な解釈があり、目撃者の記述にも差異がある。ただ言える事は、その日、空で何かが起きた、という事のみだ。
様々な解釈
これらの過去の天文現象は「幻日」ではないか、という説が最も多い。幻日とは、太陽と同じ高度の太陽から離れた位置に光が見える大気光学現象のことだ。
これなら確かに十字架のように見えるし、様々な色の球体はプリズム効果(虹)の発生で説明できる。だが、幻日だけでは音や墜落した球体のもの、煙などを説明できない。
これを補うように、今度は人間同士の地上戦がたまたまタイミングが重なったのでは、という説だ。円筒が大砲で球体は砲丸、煙は硝煙であるというものだ。
繰り返すが、起きた証拠も起きていない証拠も無いため、様々な憶測や解釈が400年の間に繰り広げられた。当然、実際は起きてなど無く、大掛かりなジョークや町おこしの類だったのでは、ニュース記事の部数を稼ぐための捏造だったのでは、という意見も出た。
信じるか信じないかはあなた次第
不可能なものをすべて排除してしまえば、どんなにありえないことでも、残ったものは真実に違いないだろう。だが、幻日はそうではない事も多い。
例えば一昔前は神話的な作り話だろうと思われていた聖書の一説であるソドムの物語は隕石による古代都市トール・エル・ハマムの滅亡という証拠が見つかり現実であった事が証明された。
この場合は地球外生命体やUFOの類などでは無く、自然現象の一つであった。
真実の証明には科学的根拠が必要だ。地球外生命体がいるならその証拠が当然必要だが、いないと反論するのであればいない証拠を出す必要がある。フェルミのパラドックスを説明する必要もあるだろう。
いずれにしても、この手の話でよく聞く言葉を借りれば、「信じるか信じないかはあなた次第」なのだ。