人の妊娠は35歳をラインに大きく分かれる。35歳以上では妊娠率が急激に下がり、出産リスクも上がるからだ。
問題には原因がある。問題解決には原因究明が求められる。この度、以前から加齢による不妊の研究を続けているカナダのモントリオール大学病院研究センター(CRCHUM)が新たな加齢による不妊の原因の1つを明らかにした。
この研究結果は将来的に加齢による不妊の治療に大きく貢献できる可能性があると言う。
染色体の動きに異変
CRCHUMの研究者であるグレッグ教授と、同研究室のアレクサンダー氏は、細胞分裂の重要な段階である減数分裂の際に、一部の染色体の動きが鈍くなることを、加齢のマウスの卵(卵母細胞)で確認した。
この鈍い動きによって、染色体の分布が不均等になってしまい、その結果として異常な数の染色体を持つ細胞が形成される。染色体分離エラーによる異数性だ。
この異常は、不妊症及びダウン症の主な原因の一つであり、高齢者が妊娠することが難しい理由の一つだという事は同センターの以前の研究でも発表されていた。
だが今回、減数分裂の際に、一部の染色体の動きが鈍くなることの発見とこの制御方法の確立で、加齢不妊の治療に大きく前進した形となる。
減数分裂を延長させ、異数性を制限する事に成功
グレッグ教授は、次のように語る
「最も速度の遅い染色体が目的地に到達するまでの時間を確保するため、化学物質を用いて減数分裂を人為的に延長しました。画像処理技術を用いて、細胞分裂前のこの減速が異数性を制限することを発見しました」
つまり、細胞分裂の重要な段階である減数分裂の際に起こる染色体の動きの鈍さを考慮し、減数分裂スピードを減速させる事で染色体が異常に形成されてしまう現象を人為的に制限出来たのだ。
作為的に制限出来るという事は治療法として確立する可能性が高いと言えるだろう。
研究はまだ必要だが大きな一歩
この発見はまだ基礎研究の段階で、実験室でマウスを使って行われている。
将来的には細胞周期レベルで介入することにより、高齢患者の卵子の質を改善することが可能になると考えられている。
カナダではカップルの6人に1人が不妊治療を受けているが、この数は1980年以降、倍の数に増えていて社会問題になっている。
この研究結果はカナダを始め、世界の女性たちの希望の1つとなるだろう。