人は脳を大きく進化させ、様々な能力を得る事が出来た。目的を達成するため、手を使って道具を作ったり、言葉を話して意思を合理的に他者に伝えたりする事が出来る。
更に、リズムに合わせて歌う、踊る、楽器を奏でるといった能力も身に着けた。人のマネをして歌を歌うオウムや、踊る事で求愛する動物などは確認されているが「自分の意識でリズミカルに歌う」動物は人以外で今まで確認されていなかった。
だが、このたびマダガスカルの固有種であり、絶滅の危機に瀕しているキツネザルの一種のインディ・インドリ(Wikipedia)に「リズミカルに歌う」能力が人以外の霊長類で初めて確認された。
有名な「オウムのスノーボール」の音楽認知実験
人以外に音楽認知能力があるか、という研究はまだ最近始まったばかりだ。上動画のスノーボールの実験は知っている者も多いだろう。
人のマネをしてるだけなのか、それとも自分の意志によるものなのかを確かめるテストだ。
結果、曲が速くなったり遅くなったりしても動きを合わせられることができる能力を持っているのが分かった。
今のところ確認されている動物はスノーボールのオウム以外にアシカとインコのみで、チンパンジーもテストされたが、わずかに持っているものの、対応力は高くなく、訓練が必要というレベルで、霊長類では未確認だった。
インドリが「ビートを刻む」能力を持っていた
マダガスカルとトリノ大学の研究者チームは、合計39匹のインドリの歌を12年以上にわたって録音し、それらの歌から人間の音楽に見られるリズムの特徴を探した。
その結果、インドリの歌には、2つの音の間隔が同じ長さの「1:1リズム」と、2つ目の音の間隔が1つ目の音の2倍の長さの「1:2リズム」という、人間が奏でるようなリズムが2種発見された。
また、人間の音楽によく見られる「リタルダンド(Wikipedia)」と呼ばれるテンポの緩やかな減少にも注目した。
このようなリズム感覚が人間以外の霊長類で確認されたのは今回が初めてだという。この研究結果の詳細は「Current Biology」誌に掲載されている。今回の発見は、インドリがビートを刻む能力を持っていることを示唆している。
音楽性の起源のヒントになる可能性
人間とインドリの音楽的な共通点は、共通の祖先によるものなのか、それともリズム能力が独自に進化した収斂進化によるものなのかは、まだ不明だ。研究者たちは、この2つの組み合わせではないかと考えている。
リズムのような音楽性の能力はどこから来ているのか。インドリはもちろん、鳴禽類や人など歌を歌う種において、同じ進化の軌跡を辿ったに過ぎない、と考えるのは簡単だろう。
だが、人の持つ音楽性が文明等で得たものではなく、そもそも霊長類の系統に根ざした本質的な音楽特性を持っていた可能性を否定する事は出来ない、と本研究の共著者であるグレゴリオ氏は語っている。