世の中には様々な学問がある。地球上のすべてのものに限らず、宇宙も含め、この世の全ての存在は学びの対象だと言える。
その中でも特に学者たちを魅了してやまない学問の1つ、物理学がある。物理学はこの世の全ての物質が「何であるか」を探求する学問だ。
力学、電磁気学、熱力学、量子力学、統計力学などや、物理数学、原子物理学、相対性理論、物性物理学、素粒子論、流体力学、電気力学、量子力学などなど物質に関する学びは非常に多岐にわたる。
それほど物質に関しては不明な点が多く、解明する事で人はより進化出来る、という点が学者たちを魅了する理由になっているのかもしれない。
説明できない現象の再現に成功
2020年3月、粒子と力に関する標準モデル(標準模型)の基本原理の1つを覆す粒子の証拠を発表し、新たな基本粒子と力の存在の可能性を示唆した。
そして今回、ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所の物理学者が行ったさらなる測定により、同様の効果が発見され、新しい物理学理論の存在を裏付ける結果となった。
CERNのLHCb実験が発表したこの結果は、現在の基礎物理学の理論では説明できない現象を再現するもので基礎物理学の新しい理論誕生に期待がかかる。
標準模型は不完全である
標準模型を超える物理学理論の発見は物理学者たちの大きな目標となっている。
なぜなら、物理学者は標準模型が不完全であることを知っているからだ。標準模型には重力が含まれておらず、ビッグバンで物質がどのように生成されたかを説明することもできていない。
また我々が認識できる世界を構成する物質より5倍多いと言われる暗黒物質を説明する物質も含まれていない。
ビューティ・クォークの研究
新しい粒子を探す最も良い方法の1つは、「ビューティ・クォーク(ボトムクォークとも言う)」と呼ばれる粒子の研究だ。ビューティークォークは、原子の核を構成するアップクォークとダウンクォークのいとこのような存在と考えられている。
ビューティークォークは、他の粒子に変化したり崩壊等まで、平均1兆分の1秒しか生きられないという非常に短命な粒子故に、世の中に大量に存在することは基本的にない。
しかし、CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)では、毎年何十億ものビューティー・クォークが生成され、LHCbと呼ばれる専用の検出器で記録されている。
ビューティー・クォークの崩壊にヒントが
LHCbの物理学者チームは、ビューティークォークがミューオンと呼ばれる粒子に崩壊する頻度が、軽い電子に崩壊する頻度よりも低いことを示す結果となった事を発表した。
これは、電子とミューオンを同じように扱う標準模型では説明できないことだ。ビューティー・クォーク崩壊には、未知の力や粒子の存在が影響している可能性がある。
ビューティークォークは、ミューオンと同じ割合で崩壊するはずだが、今回の実験でミューオン崩壊が電子崩壊の約85%しか起こらないことが分かった。
新しい理論誕生に期待がかかる
LHCbの結果と標準模型との差は、実験誤差の約3単位(素粒子物理学では「3シグマ」と呼ばれている)が、この結果が統計的な偶然によるものである可能性が、1000分の1程度しかないことを意味している。
だが、この効果が本物であるかどうかを確かめるには、実験誤差を減らすためにさらに多くのデータが必要だろう。なぜなら、結果が「5シグマ」の閾値に達したとき、つまり偶然の産物である可能性が100万分の1以下になったとき、素粒子物理学者はその結果を真の発見とみなし始めるからだ。
今後の更なる検証と証拠の積み重ねに期待したい。