テクノロジー
宇宙で太陽光エネルギーを得て地球に送るプロジェクトが進行。(提供:John Mankins/AIMS via space.com) )

いよいよ宇宙太陽光発電の時代が到来か。あと10年の間に実現する可能性。

現在世界では気候変動とエネルギー供給の問題に直面している。先日、英国の都市・グラスゴーで開かれている第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催されたのは記憶に新しい。

UK Government Web Archive
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気候変動とエネルギーは密接な関係にある。気候変動を抑える有効的な手段として常に上がるのが各国の温室効果ガスの排出の削減だからだ。

現代社会において電気やガスは無くてはならないエネルギー源だ。そしてゴミの排出量も人口増加及び技術の発展に伴い増加していく。その結果、温室効果ガスの発生量が増えていく。

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温室効果ガスとは


温室効果ガス(GHG)はよく目や耳にするが、実際は何を指しているのだろうか。一般的に温室効果ガスは水蒸気、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンなどが該当する。

温室効果ガスとは、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより温室効果をもたらす大気圏にある気体のことだ。

温室効果ガス - Wikipedia

見ての通り、温室効果ガスは燃焼や排気ガスなどで増えていく。中でも火力発電は代替方法が既に確立されているため、火力発電を中心とした電気エネルギーの生成が批判される流れとなっている。例えば、火力発電がメインの日本は気候変動対策に後退的だとして不名誉な化石賞を受賞している。

電気は主に石炭火力発電、液化天然ガス火力発電(LNG)、原子力発電、風力発電、水力発電、太陽光発電、地熱発電などで生成される。このうち、温室効果ガスを排出しない発電法が風力や水力、太陽光などの自然エネルギー発電で、これらが推奨される。

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いよいよ宇宙太陽光発電の時代が到来か

温室効果ガスに関してなかなか火力発電から抜け出せない日本だが、実は抜本的解決になりえる「宇宙太陽光発電」の開発に各国と連携して参加している。

宇宙ではご存知のように太陽が沈まない。発電する衛星を使い、太陽光エネルギーを獲得するというアイデアは研究者たちの興味を引いてきた。

この考えは何十年も前からあったが、今では世界中で新たに注目を集めてる。米国や中国、日本の専門家、欧州宇宙機関や英国宇宙機関の研究者などが、宇宙での太陽光発電の実現に向けて取り組んでいるからだ。

この技術やシステムの開発は、あと10年もすれば実現可能なレベルにまで到達しているという。

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どのように電力を地球に送るのか

宇宙太陽光の技術を現実的なものにしたピーター・グレーザー。(出典:Alchetron

ワイヤレス電力伝送のアイデアは、19世紀末のニコラ・テスラにまで遡るが、現実的なアイデアが出たのは1968年、米国の宇宙開発者であるピーター・グレーザーの案だ。

彼は、太陽電池を使って太陽光からエネルギーを収集し、マイクロ波を地球上の受信アンテナ(レクテナ)に照射するという斬新な方法を考案し、特許を取得した。

そのマイクロ波を電気エネルギーに変換し、電力網に供給するというものだ。そして1970年代半ば、NASAジェット推進研究所の施設であるカリフォルニア州のゴールドストーン深宇宙通信施設で、数十キロワットのマイクロ波送電実験に成功した。

この特許とアイデアは現在でも意思が受け継がれ、宇宙から地球に電力を供給することを目的としたプロジェクトであるSSPIDR(Space Solar Power Incremental and Demonstrations Research)が米国空軍研究所(AFRL)との協力の元で進行している。尚、バックグラウンドには宇宙太陽光発電システム(SSPS)を設計した企業であるVirtusSolisが存在している。

この10数年でテクノロジーは飛躍的に進歩し、今後10年間で宇宙太陽光発電(SSP)が実現する可能性が高いのだという。

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メガコンステレーションの登場

SSPIDRはメガコンステレーションの登場でより現実味が出てきた。(提供:AFRL via space.com)


飛躍的なテクノロジーの進歩の他の大きな変化としてメガコンステレーションの登場が挙げられる。

スペースXの競合ロケットラボの「メガコンステレーション」計画 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
ニュージーランドに本拠を置く宇宙開発企業「ロケットラボ(Rocket Lab)」は、衛星コンステレーション用の小型衛星を運搬するロケットを、2024年から打ち上げる予定だ。同社は将来的には人間の輸送も計画している。ロケットラボは3月1日、ミ...

メガコンステレーション計画として、スペースX社は毎月30トンの衛星を大量生産しており、5年以内に4万個の衛星を製造し、そのすべてを打ち上げることを目指している。

これを見ても分かるように、モジュール化され、大量生産されているため打ち上げコストの低減とハードウェアコストの低減というハードルは克服されている。

宇宙への打ち上げ能力の向上、宇宙での組み立て・保守・サービスシステムのためのロボット技術の進歩、高効率のソリッドステートパワーアンプなどの各種コンポーネント技術の成長が「10年以内に実現可能」と予測する理由だ。SSPは日の目を見る準備が整っている。

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未来はどうなるのか


宇宙航空研究開発機構(Spacefaring Institute)のジェームズ・マイケル・スニード氏は、早くからSSPに必要なエネルギー政策の理解と確立に注力してきた。

スニードは、2100年までに電力の約20%を地上の既存のエネルギー(自然エネルギーが理想だが)で賄い、80%を宇宙電力で賄うことを想定している。そのためには、安全性と有効性を重視した新しい有人宇宙飛行システムを設計・製造する産業界の努力を管理する必要があるだろう、と語る。

Artemis Innovation Management Solutions社のマンキンス氏は、アラブ首長国連邦のドバイで開催された第72回国際宇宙会議で、SPS-ALPHAを発表、ビジネスモデルと段階的なSSPロードマップを詳細に説明した。

SSPの実現には前述したように各国の技術や専門家が協力して開発に当たっている。だが、最終的には各国間のビジネス競争になる可能性が非常に高い。特にアメリカと中国の衝突は避けられないだろう。既に開発競争は始まっている。

気候変動に対する政策の緊急性については、時間が経てば経つほど、船に乗り遅れる可能性が高くなる。日本は現在「一部の開発プロセスにおける専門家」の参加のみとなっており、開発競争には参加できていない。

今のままだとSSPが実現しても「消費者」の立場しか取れない可能性がある。今後の日本政府、及び日本で宇宙開発に携わる科学者達には船に乗り遅れないよう邁進して貰いたいところだ。投資無くして日本の未来は無いだろう。

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参考文献

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Amet

旅行が趣味の団塊ジュニア世代。旅先で歴史を学んだり遺跡を見学したりその土地の食べ物を楽しむ事をライフワークにしています。本業はテクノロジー/マーケティング関係で情報収集と分析が専門です。

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