超新星爆発という言葉をどこかで聞いたことがある、或いはよく知っているという人はとても多いと思う。
古くは2世紀に記録されたり、16世紀の天文学者にも観測されているが、実態が知られたのは19世紀後半と、まだまだ最近の話だ。スーパーノヴァと呼ばれるこの現象は星の死を意味し、今も宇宙のどこかで起きている。
突如光り輝く超新星爆発はその美しさだけでなく地球の過去の大量絶滅や宇宙の謎にも影響していると考えられている事から科学者たちによって日々観測や研究が進められてきた。その超新星爆発を引き起こす証拠が見つかったとカリフォルニア工科大学の論文によって報告された。
超新星爆発は天体衝突が原因だった
カリフォルニア工科大学の大学院生で論文の主執筆者であるディロン・ドン氏はブラックホールや中性子星が伴星の核に入り込み、その伴星が超新星として爆発したという劇的な証拠を発見した。
ドン氏は「このような現象が起こることを予測していましたが、実際にそのような現象を見たのは今回が初めて」と語っている。
詳細は『Science』誌に発表されているので合わせて参照して欲しい。
VLASSからのデータによって裏付けられる
上記画像は一連の流れだ。
- 左上画像は中性子星やブラックホールが、通常の伴星(水色)の周りを何千年もかけて接近していく様子。
- 右上画像は中性子星やブラックホールが伴星の大気中に入り込み、ガスを外に放出して渦巻き状に膨張する様。
- 左下画像は伴星のコアに到達、一時的にリング状になり物質が噴出、星の外に飛び出していく。伴星の核が崩壊して超新星爆発を起こした。
- 右下画像、超新星爆発で飛び出した物質が、先ほどの相互作用で噴出した物質に追いつき、強い衝撃波が発生、VLAで観測された電波の発生だ。
これは、米国科学財団の超大型干渉電波望遠鏡群(通称:VLA / Wikipedia)を用いた複数年にわたるプロジェクト「Very Large Array Sky Survey(VLASS)」のデータから得られたものだ。
2017年に観測を開始したVLASSの画像を調べたところ、電波を明るく発しているが、以前のVLAのスカイサーベイであるFIRST(Faint Images of Radio Sky at Twenty centimeters)では現れなかった天体を発見したことが手がかりとなった。
この手がかりをもとに、VLAとハワイのケック望遠鏡を用いて、VT 1210+4956と名付けられた天体の観測を行った。この電波は、地球から約4億8,000万光年の距離にある銀河の外側から来ていること、更に国際宇宙ステーションのMAXI装置が、2014年にこの天体から放出されたX線のバーストを検出していたことが判明した。
軌道に乗って近づく2つの巨星
これらの観測データにより、2つの巨大な星の間で何世紀にもわたって繰り広げられた歴史を解明することができた。
連星として生まれた2つの星はお互いに密接な軌道を描く。一方はもう一方よりも質量が大きく、核融合による通常の寿命をより早く終え、超新星として爆発し、ブラックホール或いは超高密度の中性子星を残した。
ブラックホールや高密度の中性子星の軌道は順調に伴星に近づいていき、大気に突入する。この相互作用によって、宇宙空間に向けてガスが吹き出し始め、放出されたガスは外に向かって渦を巻き、トーラス(Wikiedia)と呼ばれるドーナツ状に広がるリングを形成する。
天体衝突によって加速される
やがてブラックホールや中性子星は、相手の星の核の内側に入り込み、核融合を破壊してエネルギーを生み出す事で核が自らの重力で崩壊するのを防いだのだ。
核が崩壊すると、一時的に周りを回るリング状の物質が形成され、リングから光速に近い速さで物質が噴出、星を貫通する。
この噴出は、国際宇宙ステーションのMAXI装置で確認されたX線を発生させた噴出で、この日付が2014年であることを裏付けている。
2014年の超新星爆発で放出された物質は、伴星から先に放出された物質よりもはるかに速く移動しており、VLASSが観測した時には、超新星爆発がその物質に衝突して強力な衝撃を与え、VLAで見られた電波を発生させていたのだった。
星の核が崩壊したことで、連星の爆発に続いて超新星として爆発した事が判明した。大昔に爆発した星の残骸が伴星にぶつかり、爆発したのだ。伴星はいずれ爆発する予定だったが、この衝突によって加速されたととダン氏は語る。
今回の発見の鍵となったのは、VLAの緯度で見える全天の約80%を7年間で3回撮影するVLASSだ。
VLASSを行う目的の一つは、超新星爆発のように電波で明るく発光している過渡的な天体を発見する事だ。
しかし、今回の超新星は恒星の合体、天体衝突によるもので、本来のVLASSの目的とは異なるもので科学者達も驚きを隠せないようだ。