環境に配慮する関係で日本で店舗におけるビニール袋の有料化が始まった。これについては賛否あるが、まだ効果が示されていないため是非は問わない。
ビニール袋の有料化はプラスチックごみの削減が狙いだ。プラスチックごみは地球の至るところで環境を悪化させている。
中でも海洋を漂うプラスチックごみは細分化されてしまい、自然分解されず、数多の目に見えないマイクロプラスチックとなって海洋生物の胃の中に入り、悪影響を与え、その海洋生物を我々が食している。
プラスチックごみは我々人類にも大きな悪影響を与えるもので、人類全体で当たるべき問題だ。様々な解決策が議論される中、興味深い提案が浮かんだ。
プラスチックごみを燃料に
ウースター工科大学、ウッズホール海洋研究所、ハーバード大学のメンバーで構成される研究チームは、海を漂うプラスチックごみを、海をきれいにするために働く船などの燃料として利用できるのではないかと考え、提案した。
今回の研究では、このような計画をサポートするために、プラスチックを船の燃料に変換するプロセスを説明している。この研究論文は「PNAS」誌に掲載されている。
ゴミ問題の解決にはどうしてもコストの問題が関わってくる為、燃料費の節約になる提案は非常に有意義なものと言える。
プラスチックの有効利用
年に何百万トンものプラスチックが海に廃棄されている。プラスチックごみは海の中で破壊され、目に見える程度のサイズの大きな破片となる。破片は集まってプラスチックの「島」を形成し、徐々にマイクロプラスチックを作り続ける。
これらのプラスチックは、風や地球の自転によって発生する海流の大きなシステムであるオーシャンジャイアー(海流の回転)に巻き込まれ、世界中の海に拡散される。
マイクロプラスチックの回収は非常に困難なため、マイクロプラスチックを生み出す破片を取り除く必要がある。破片が集まったプラスチックの島を船が集めて何千キロも離れた港に運ぶ。
集めた海洋プラスチック廃棄物は、熱水による液化などを利用して、船の燃料に変換することができる。つまり、継続的なコスト削減とゴミの処理の2つの問題を解決できる可能性があると言える。
どのように燃料化するのか
プラスチック廃棄物は、水熱液化(HTL)と呼ばれるプロセスを経て、一種のオイルに変換することができる。HTLは、プラスチックを標準大気圧の250〜300倍の高圧で、摂氏300〜550度程度に加熱する。
研究チームの試算では、HTLコンバーターを搭載した1隻の船で、船とコンバーターを維持できるだけの石油を生産する事が可能だという。
研究チームは大きなゴミ地帯の周辺の複数の場所に常設の収集ブームを設置し、船が変換するためのプラスチックを安定的に供給するシステムを想定している。
問題点
このようなアプローチには問題がないわけではない。HTLプロセス自体や、生成されたオイルを燃焼させることで、当然ながら二酸化炭素が排出される。
また、ゴミの山と港を行き来することになるため、時間を必要とするため作業全体を遅らせることになりかねない。だが、この工程はどのような方法をとったとしても必ず必要になってしまう。
とはいえ、従来の燃料を燃やす船が清掃活動中に排出する量よりは少ない。HTLプロセスは比較的少量の固形廃棄物を発生させるため、最終的には港に戻す必要があるし、乗組員の物資や業務にあたる事が可能な時間も限られているため、結局のところ、「二酸化炭素は排出される」のと「港と海洋の往復」は避けられない。
同じ工程が必要であるなら、コストの削減に加えて回収した海洋ゴミの処理の両問題に貢献する本提案は魅力的ではないだろうか。