この地球上に生命が誕生してから、常に食物連鎖は起こり、いつの時代にも頂点に君臨する者がいた。
今から2500万年前の漸新世末期、南オーストラリアで食物連鎖の頂点に君臨していたのは猛禽類であるワシだった。
この度、南オーストラリア州でフリンダース大学の古生物学チームによって非常に保存状態の良い2,500万年前のワシの化石が発見された。
新種と判明
このワシはオーストラリア且つ世界で最古のワシの1つであり、直接の子孫が現在は存在しない、絶滅した新種である事が分かった。
「Archaehierax sylvestris」と名付けられたこのワシはオナガイヌワシよりもわずかに小さくて痩せていたが、当時では最大のワシだった。
この発見は学術誌『Historical Biology』に掲載されている。
貴重で稀な化石
発掘は南オーストラリアのピンパ湖(地図)付近で、フリンダース大学の古生物学チームが失われた生態系の調査を行っていた所で発見された。
基本的に食物連鎖の頂点に立つワシも例外なく、常に数が少ないため、化石として保存される事は多くない。
今回発見された化石は骨格の大部分が残っており63個もの骨が見つかる非常に珍しいものであったため、詳細も把握しやすい。
化石と当時の環境から推測される生体的特徴
足の長さは15cmほどあり、、大きな獲物をつかむことができた事が推測される。当時、陸地で最大の有袋類を捕食していたのは小型犬や大型の猫程度のサイズである為、このワシがこのエリアの頂点に君臨していたのは間違いないだろう。
とはいえ、現在ほぼ砂漠地帯であるピンパ湖辺りは当時は木々や緑豊かな森に覆われていたと考えられている。森はワシのような大型の鳥にとって木や枝が非常に邪魔になる。どのように狩りをしていたのだろうか。
化石の骨を見ると、翼は体の大きさの割には短く、現在の森林に生息するワシの仲間とよく似ている一方で、脚は比較的長く、かなりのリーチがあったと思われる。
発掘チームの一員であるマザー氏は「敏捷ではあるが速度はそれほど速くなく、待ち伏せ型のハンターであった可能性が高いことを示唆しています」と述べている。
骨格や当時の環境から、水鳥や鵜、フラミンゴが多く生息する広大な浅い湖を囲む木々の中で、コアラやポッサムなどの動物を狩っていたと思われる。
ワシは現在も頂点に
ワシ(イヌワシ)は現代でも山地の生態系の食物連射の頂点に君臨している。
生態ピラミッドとしては最下層にバクテリアや菌などの分解者、木や植物などの生産者、生産者の生み出す草などを捕食する昆虫などの1次消費者、1次消費者を捕食するカエル等の2次消費者、2次消費者を捕食するヘビ等の3次消費者、2次や3次を捕食する高次捕食者であるワシ、といった具合だ。
ワシが生活していける環境は、つまりは多様な動物や豊かな植物群が存在する事を意味する。
前述したこの新種のワシ「Archaehierax sylvestris」は絶滅した。この事から2500万年前にオーストラリアで何があったのかをより把握するヒントになるかもしれない。