歴史・考古学
スペインの海底で16世紀のアストロラーベが発見された。(出典:FEDAS via Ancient Origins

アストロラーベ(古代の天文観測用測量機)をスペインの海底で発見。世界で108個目。

歴史的な遺産の発見は歴史好きや考古学者のみならず多くの人々の興味を引き付け、魅了する。知られざる歴史や新しい発見のニュースを見るたびに好奇心を掻き立てられるのは筆者だけではないはずだ。

こうした新しい発見の場は様々だ。街中で工事中に偶然発見されるケースもあるし、海の中で偶然見つかったり、衛星やAI、或いは過去の記録から予測したり、地元住民がもともと知っている、または既に見つかっていた遺物を詳しく調べたら新しい発見に繋がった、なんてケースもある。

今日の新しい歴史的遺産の発見はダイバーによって古代の武器にユニークで興味深い遺物が海で発見された、というものだ。

スポンサーリンク

2012年に16世紀の大砲が見つかる

大砲を引き上げるダイバーたち。(出典:FEDAS via Ancient Origins


2012年、スペインのダイバーチームが16世紀に作られた2つの大砲を発見した。場所はスペインのガリシア州にあるビスケー湾の南部に位置するビベイロ河口付近のビベイロ遺跡だ。

大砲は、西暦1597年にこの河口で沈没したガレオン船「サン・バルトロメ号」のものではないかと推測されている。このエリアはスキューバダイビングのスポットとしても人気だが、同時に沈没船なども多く、考古学者たちにも人気がある。

ガリシア州政府観光局によると、2012年に考古学者が河口で30隻以上の沈没船を確認しており、そのほとんどが独立戦争中の海戦によるものだという。

スポンサーリンク

アストロラーベを新たに発見

発見されたアストロラーベ。(出典:FEDAS via Ancient Origins


更に同じ場所を、スペイン水中活動連盟(FEDAS)が設立した水中考古学者のアントン・ロペス氏が率いる15人の研究者たちの探索チーム「北方水没文化遺産チーム」が追加調査したところ、新たにアストロラーベを発見した。

発見されたアストロラーベは2つの大砲と同様に西暦1575年から1622年の間に作られたと推測されている。同様に「サン・バルトロメ号」に積まれていたものだと推測されているが、今のところ裏付ける痕跡は見つかっていない。

このアストロラーベは、ガリシア地方で発見されたこの種の天体観測機器としては初めてのものの種のものとしては、世界で108番目に発見されたものでもある。

現在アストロラーベは修復中で、ガリシア地方の重要な考古学的遺産として、ヴィーゴの博物館であるMuseo do Marに一時的に保管される予定だ。

スポンサーリンク

アストロラーベとは

アストロラーベの一例。(出典:Wikipedia


アストロラーベとは、時間や位置を計算するための古代の科学機器全般を指す言葉で、広義に使われている。Wikipediaでは以下のように解説されている。

古代の天文学者や占星術者が用いた天体観測用の機器であり、ある種のアナログ計算機とも言える。用途は多岐にわたり、太陽、月、惑星、恒星の位置測定および予測、ある経度と現地時刻の変換、測量、三角測量に使われた。イスラムとヨーロッパの天文学では天宮図を作成するのに用いられた。

数世紀前から、航海士が海上での方向を定めたり、目的地へのコースを計算する等のに使われていた。水平線と子午線の両方に合わせることが可能で、これにより天文学者は太陽、月、星の位置を計算することができた。

スポンサーリンク

発見された108番目のアストロラーベの詳細

108番目のアストロラーベ。今後は修復される予定だ。(出典:La Voz de Galicia via Ancient Origins


発見されたアストロラーベは純銅製で、重さは4.92kg、円周は21cmとなっている。Archaeology News Networkの取材で発見者のロペス氏は「 海洋航行の高度な技術を示すものであり、航海するにあたり常に重要なものであった」と述べている。

特に注目すべきは他の107つのアストロラーベには見られない「3つ葉のリングと銛の形をしたアリダード」だ。アリダードとは、円形の台座を中心に回転する青銅製の棒のことで、天体に合わせて海上での方向や進路を定めていた。

アリダード - Wikipedia

「三つ葉リング」 は、3本の指のような形をしており、移動する船をより確実につかむことができるため、この装置のベースを形成している。

アストロラーベは地球上で「最も保存状態の良い10のアストロラーベのうちの1つ」とされる非常に貴重な発見であり、今後の修復と一般公開に期待がかかる。

アストロラーベは古代の天文学から始まり、中世に開発された。その軌跡を見てみよう

スポンサーリンク

参考文献