現在、人類（ホモ・サピエンス）は地球にある陸地のほぼすべてに分布している。大陸は勿論、殆どので小さな島でさえ人が暮らしている。
ホモ・サピエンス以前の人類、最も古いであろうと言われているホモ・ハビリス（Wikipedia）は、少なくとも200万年前に東アフリカで進化を遂げ、各地に拡散していったと考えられている。
多地域進化説とアフリカ単一起源説とで、まだ議論は続いているが、進化論で有名なダーウィンを始め、今に至る多くの科学者は出アフリカ説を支持しており、東アフリカで誕生したホモ・ハビリスが人類の祖であるとする点は一致している。
では、アフリカから世界中に、人類はどのように移動していったのだろうか。
アフリカ単一起源説
人類誕生から世界への拡散。（出典：Wikipedia）
アフリカ単一起源説であると仮定した上で進めよう。人は、東アフリカで「人類」に進化し、世界各地へ拡散した。
上の画像は今までの出土品などから想定した人のおおよその拡散の動きだ。25万年前にアフリカに誕生、7万年前にユーラシア大陸に移動し、各地に拡散した。
日本には3万5千年前に、アメリカ大陸には1万2000年前に移動してきたとされている。実際、2018年には1万3000年前の人類の足跡が北米、カナダで発見されている。
だが、歴史は常に更新される。例えば上の画像では中東辺りは4万5000年前となっているが、2020年に12万年前の人類の足跡が発見された。
このように、まだまだ人の移動の歴史は解明されていない事が多く、データは今後も更新される可能性がある。そして、これまでは1万3000年前の足跡がアメリカ大陸で最古とされてきたデータも、この度更新される事になった。
2万1000年以上前の足跡がアメリカ大陸で発見
発見された。足跡（出典：ボーンマス大学 / via:NBC news）
この度、2万1000年～2万6000年前の足跡がアメリカ大陸で発見されたと「Science誌」で発表した。場所はアメリカの「白い砂漠」、ホワイトサンズ国立公園(Wikipedia)だ。
ホワイトサンズは、現在は砂漠だが、以前は青々とした湿地帯で、マンモスやウシ、ラクダや、それらを狩猟した人間が住んでいた。
長い期間にわたって複数の足跡層が存在しており、最終氷期の最盛期に人間が持続的に存在していた可能性が高い。
炭素年代測定にて年代を決定
足跡発掘の様子（出典：ボーンマス大学 / via:NBC news）
本調査はコーネル大学、ボーンマス大学、国立公園局、米国地質調査所、アリゾナ大学の科学者によって実施された。
発見された足跡は干上がった湖で見つかった。同層で発見された植物の種子を炭素年代測定し、判明している。
英国ボーンマス大学の環境・地理科学教授であるマシュー・ベネット氏は、「この足跡は、人類が最後の氷河期以前、最大で3万年前に北米に到着した可能性を示唆している。」と述べている。
最終氷河期のピークは「最終氷期極大期（Wikipedia）」と呼ばれ、今から2万年前から2万6000年前の間とされている。
この新しい証拠は、同様の時間軸を示すいくつかの証拠と一致する。例えば2020年に「Nature誌」で発表されたメキシコの洞窟で発見された人の石器は、2万6000年前に人間がアメリカ大陸にいた可能性を示唆していた。
最終氷期には広大な氷が張り巡らされ、太平洋岸やカナダ西部への移動は不可能である事から、人類がシベリアから北上してアメリカ大陸に到着したかどうかは、最終氷期極大期の前後で議論されてきた。
足跡は明確な「人が存在した」という確かな証拠になる。今回の発見は人類の分布に関する非常に重要なデータとなるだろう。
足跡から想定される当時の生活
大人や子供の足跡が混在している。（出典：コーネル大学 / via:phys.org）
足跡は10代の子供や若者の物と思われるものから大人の物まで混在していたが、大人の足跡よりも少なかった。
これは、彼らが狩猟のような熟練した仕事ではなく、単純労働に従事していたからではないかと考えられる。
このように人の足跡の痕跡は、いつ人類がその場所に存在し、そこでどれくらいの期間、どんな生活をしていたかをより詳細に想定できる。
最新の発見と過去までのデータを見比べるのも面白いかもしれない。
