日本でも馴染みの深い、オーストアリアの固有種、コアラが絶滅の危機に迫っている。
コアラの絶滅の危機は勿論、今になって始まった話ではない。2017年の調査ではオーストラリアのクイーンズランド州にいるコアラの数が「20年間で53%減」したと発表があった。
これでも速いスピードで絶滅に向かっていたが、2019年から2021年の3年間でそのスピードは驚異的に加速したという。
政府の公式発表より実態は少なく
かつてオーストラリアには800万頭ものコアラが生息していたが、現在は5万頭、最悪もっと少なければ3万頭まで減少している可能性も高い。
2018年にはまだ個体数がそれなりに確認されていた7つの地域でもコアラが絶滅しており、まだ存在する地域でも5~10頭しか残っていないとオーストラリア・コアラ財団(AKF)が発表した。
野生のコアラは、3年前の4万6,000~8万2,000頭から驚異的なスピードで減少し、3万2,000~5万8,000頭しか残っていないと推定されている。
この数値はコアラの数を50万頭とする政府の公式推計値よりもはるかに少ない数だが、AKFが出した数値の方が信頼できると主張している。
5000頭以上のコアラがいるのは2地域のみに
コアラの数の減少はオーストラリアの全域で確認されている。現在コアラの数が最も多いのはクイーンズランド州だが、それでもたった6500頭に留まる。
他の地域で5000頭を超える地域はコランガマイトのみ。24の地域では100頭以下にまで激減している。かつて5000頭を超える地域は5つあったが、わずか3年で2つに減少した。
AKFの委員長であるタバート氏はクイーンズランド州でのコアラの死体を数えており、7年間で2万頭にも及ぶと述べている。
コアラが死んでしまう原因の多さ
フリンダース大学の生態学教授であるコリー・ブラッドショー氏は以下のように語る。
「コアラがいつ絶滅するかは議論の余地がありますが、絶滅するかどうかはもう議論の余地がありません。彼らの本来の生息地のほとんどが伐採され、道路や土地開発によって大きく分断されています。また、遺伝的な問題や病気も多く、生き残ったものが犬に襲われたり、車に轢かれたりしています。さらに気候変動によって多発する山火事も加わり、長期的な希望は持てません。」
コアラの死因はとても多く、結果として驚異的なスピードで絶滅に向かっているが、その多くは人間の存在によるものが大きい。
森林の伐採は勿論、森林を道路開発等で分断するだけでも、木と木の間を移動するコアラにとって車に引かれる危険性を生んでしまっている。そのため、地上に降りざるを得ず、結果的に犬の標的になる。加えて、温暖化による山火事の多発だ。
気候変動がなくとも、恐らく絶滅の危機にあったと思われる。人の手で絶滅に瀕しているなら人の手で救う必要があるだろう。
救うスピードよりも死亡するスピードが勝っている
しかしながらひとことで「救う」といっても簡単な事ではない。コアラが妊娠し、生まれて育つまで時間がかかるが、死ぬときは一瞬だ。
前述通り、コアラの死因はとても多い。気候変動は確かに世界中の多くの動物を絶滅への道に歩ませているのは確かだ。実際に、2019年の山火事で30億の動物が死亡した。
だが、その理由は決して1つではない。問題は「極端な出来事の頻度の高さ」にある。野生動物の回復にかかる時間よりも無くなるスピードが早ければ当然絶滅に向かうだろう。
今、オーストラリア政府にはコアラを保護するより強固な法案が求められている。