地球に住む者にとって月は太陽と同様に欠かせないものだ。太陽系が中心というのもあって太陽が目立つが、地球の周囲を回る月も地球に大きな影響を与えている。
例えば身近なものなら、引力と遠心力により満ち潮や引き潮などの影響を引き起こすのはよくご存じだろう。それ以外にも、地球から月の裏側は常に見えないが、裏側は表とは比べ物にならないほどのクレーターの数がある。
これは本来地球に衝突するはずだった隕石等を月が受け止めていた、つまり盾の役割を果たしていたと考えられている。が、それでも月が生まれたとされる45億年という年月を考えるとクレーターが少ないと言われている。
このように、まだまだ月には謎が多く、よくわかってない事が多い。そんな月の謎に関して、ある科学者が研究結果を公表した。
なぜクレーターが少ないのか
オーストラリアのカーティン大学地球惑星科学部および宇宙科学技術センターのカタリナ・ミリコヴィッチ准教授は月にはもっと多くの小惑星の衝突に耐えてきた可能性がある事を今回の研究で明らかにした。
月に残されている衝突の痕跡の中でも最も古いものは目に見えないほどのかすかな痕跡だ。その理由は、衝突した当時の月の表面がとても柔らかかったからだと考えた。
柔らかい表面、つまり、月が冷えて固まる前の若い頃に、月の表面はマグまで覆われていた、というものだ。
盆地を形成するには数が足りない
以前の研究で、月に形成されている盆地と比べて、残されている岩石体の数が足りてない事が数値シミュレーションで示されている。
この謎は今回の研究の「月が誕生してから10億年ほどは表面はマグマで覆われていた」という仮説で説明できる。
ミリコヴィッチ准教授は「若い頃の月には、地球規模のマグマの海が形成されており、数百万年かけて冷却され、現在の月が形成されたと思われる。そのため、小惑星などの天体がマグマに衝突しても、明確な痕跡は残らず、衝突が起きたことを示す地質学的、地球物理学的な証拠はほとんどない。」と述べている。
月の把握が太陽系の成り立ちのヒントに
月にあったであろうマグマの海が固まるまでの期間は、太陽系進化の初期にあったとされる大規模な惑星間衝突を経験するのに十分な時間があったと推測される。
ミリコヴィッチ准教授は、太陽系の歴史の中で最も初期の頃に起きた衝突によるクレーターの記録を理解することが太陽系の成り立ちのヒントになると考えている。
未知の要素があることを知るだけでも、数十億年前にこの太陽系で何が起こったのかという、現在の仮想モデルを改善するのに役立つだろう。
そして、前述したように月の近くに住んでいる我々地球人にとって、月を理解するのは非常に重要な事だ。
月に起こったことは地球にも何らかの影響を与えたはずで、私たちの惑星とそこに住む生物がどのようにして誕生したのかをより深く理解できる可能性もあるだろう。