早く走る事。それは地球上で発揮できる能力を計る最もシンプルで分かりやすい方法だ。早く走れれば走れるほど能力や技術が高い証明となる。
人、車、自転車、バイクに舟など地球上では様々な形で速度をレースという形で競い合っている。
この地球上におけるレースに新たに「空中」のフィールドが2022年に追加される。
空のF1、はじまる
空のF1が始まろうとしている。2022年に予定されている有人の飛行レース、EXAのデビューに向けて、0-62mphをわずか2.8秒で加速、空中を2台で走行するデュアルテストランにAirspeederが成功した。
mphはMile Per Hourの略、つまり時速nマイルを表す単位だ。1マイルは1.6kmなので62mphはおよそ時速約100km。
Airspeederは空中で時速100kmに加速するまでかかる時間に2.8秒を記録したのだ。この記録はF1のレベルに勝るとも劣らない記録だ。
テスト走行は南オーストラリア州アデレード近郊で行われた。2台が一緒に空を飛んだのはこれが初めてとなる。このテストは同じ空間を複数台が飛行した際の安全性を確かめるという点で非常に重要な意味を持つ。
Airspeederとは
Airspeederは世界初となる飛行型レーシングカーだ。Alauda Aeronautics社がアデレードで開発しており、ヘリコプターと戦闘機とF1カーを混ぜ合わせたようなもので「オクトコプター」と呼ばれている。
テスト走行に成功したのはMk3と呼ばれる3番目のプロトタイプで、現在計測されている最高速度は時速120kmを超える。定義は電動垂直離着陸機(eVTOL)となっており、ドローンと同様に空中に垂直に離陸できるため滑走路の心配がない。
Airspeederは電気で動く。リチウムポリマー電池を搭載しており、約15分間の飛行が可能だ。レースはおよそ45分を予定しているため、F1などと同様にピットインをしてバッテリーを交換するプロセスもレースの勝敗を分けるファクターとなっている。
今回のテストは無人で遠隔操作にて行われたが、2022年には操縦席に実際に人が搭乗する、世界初の空のレースの開催が予定されている。
ただし、プロジェクトは順調ではない
ここまで読むと順風満帆のように思えるかもしれないが、実際はAirspeederのプロジェクトは順調とは言えない状況にある。
2019年7月、ウェスト・サセックス州のグッドウッド飛行場で、2つ目のプロトタイプであるMk2が制御不能に陥るアクシデントが発生。
遠隔操作されていたこの機体は、ガトウィック空港の飛行ルートに向かって約3,000m上昇した後、住宅近くに墜落した。当時は200人の招待客もいたため、彼らに避難指示が出た。
今回2台同時走行に成功したのは、人身事故に繋がりかねなかった2番目のプロトタイプ、Mk2の後継機にあたる3番目のプロトタイプ、Mk3だ。まだまだテストを重ねる必要がある時期という印象も否めない。
2022年の有人レース開催まで、いかに安全性を示す事が出来るかが、今後のAirspeederの発展の鍵となるだろう。