気候変動対策として、世界各国で温暖化ガスを排出するガソリン車やディーゼル車、更に電気とガソリンを両立し環境に配慮したとするハイブリッド車までも法的に廃止する流れとなっている。
異常に頻発する山火事、記録的な高温、融解する氷河。温暖化の原因が人類であるかどうかはまだ議論の余地があるだろうが、人類が温暖化に貢献する事を止めなければいけない、という事に関してはもはや議論の余地はないだろう。
それほどまでに深刻な状況になっているのは明らかだ。特に世界中でガソリンを燃やす事で機能する車をどうにかする必要があり、各国、各車メーカーで脱ガソリン車、完全電気自動車の開発や導入に向けて法整備が進む。
世界で進む車の「電化」
世界中の車メーカーが脱ガソリン、電化へ開発を進めている。開発にあたり、政府からの補助金も出るケースも多く見られる。
それもそのはず、各国の政府が脱ガソリン車へ向けて強固な法整備を進めているからだ。イギリスは2030年までに現行車(ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド)の新車販売を禁止、ノルウェーは2025年に現行車の販売を禁止した。フランスでは2035年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止、アメリカも州ごとにタイミングは異なる者の同様の措置を取る。そして、特に温室効果ガス排出量の多い中国でも2035年までに従来のガス燃焼車を段階的に廃止する動きとなっている。
特に技術力や経済力の高い先進国では率先して動くよう国連からも求められている。日本も例外なく、政府は2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする事を目指す「2050年カーボンニュートラル」プロジェクトを立ち上げている。
日本は2050年だからまだ余裕がある、という訳ではない。日本の各車メーカーは日本人だけが顧客ではない。もはや脱ガソリン車の開発が生き残り戦略と言っても過言ではないだろう。
車メーカーだけの努力では不可能
とはいえ、車の仕様を変えれば問題が解決するわけではない。電気自動車の動力は、勿論電気だ。つまり、車を充電しなければ動かない。
日本でもHV車の普及で以前よりも充電スタンドを見かける事が多くなっただろう。HV車はガソリンと電気が動力だ。純粋な電気自動車より電力は少なくて済むがそれでも時間がかかる。
もう予想が付くだろう。ガソリン車を電気自動車に変えたところで充電するエリアが全く足りてないし、増やしたところで各所で渋滞が起きるだろう。燃料タンクにガソリンを注入するよりも充電す方がはるかに時間がかかるのだ。
この充電の問題が解決できなければ脱ガソリン車の社会実現は不可能だ。それに、今のように火力発電が主流のままでは電気の供給が増えれば、今より温室効果ガスの排出量が増える可能性も否めない。
充電の問題、発電を自然エネルギー主流にする、などが急務だが、問題はまだまだ残っているのが現状だ。
ソリューション
充電の問題解決に一番乗りとなりそうなのがアメリカのミシガン州だ。同州のグレッチェンホイットマー知事は、モーターベラ自動車ショーを開き、州がワイヤレス充電道路のテストを開始することを発表した。
ワイヤレス充電道路はその名の通り、電気自動車が走行中に充電できるシステムだ。2018年にスウェーデンが格納式アームを介して車両を充電できる電化レールを使用したシステムのテストを開始したが、今回のワイヤレス充電道路はこの手のタイプではない。
現行の舗装道路で走行中でのワイヤレス充電を可能とするものだ。これには道路の整備だけでなく、車体にも対応する必要がある。
最初に実用されるワイヤレス充電車両になるか
このワイヤレス充電道路に対応している最初の車両になりそうなのがGenesis社のGV60だ。
GV60には、一般的な家庭用充電器よりも早くバッテリーを補充できるワイヤレス充電機能がオプションで用意される。アメリカのWiTricity社の技術を採用し、従来の充電器では約10時間かかるところ、オプションのワイヤレス充電機能では約6時間で充電が完了。
WiTricityの試算では、ワイヤレスシステムの充電効率は89~94%で、レベル2充電器と同程度とされている。
GV60は2021年末には韓国で発売され、同国で2022年後半にワイヤレス充電機能の試験運用を開始する予定としているが、世界各国で道路の整備や法整備が無いため、普及はまだまだ先になるだろう。
ワイヤレス充電自体は初めてではない
車両のワイヤレス充電はGV60が初、というわけではない。
2017~2018年あたりにBMWが限定的にプレミアムEV車としてワイヤレス充電車を発表している。
だが、やはり停車する必要があり、充電時間も大きく時間がかかる。世界の全ての車が脱ガソリンを目標とするには不十分だ。
しかし、充電時間が早く、且つ走行中に充電できるのであればかなり現実味が沸くだろう。
この充電道路システムはアメリカ以外にイスラエルとノルウェーでも導入が検討されている。