地球には様々な環境がある。熱い場所、寒い場所、草原や森、浅瀬の海や深海、川や空、砂漠や熱帯雨林など、多岐にわたり、それぞれのフィールドには何かしらの生物が生息している。
環境に適応し、進化してきた生物たちの多様性には誰もが驚かされるほどだ。例えば今現在、生息している脊椎動物は、今まで誕生してきた脊椎動物の総数の1%にすぎず、残りの99%は絶滅種である、という説もあるほど、生物の進化と多様性には大きな生命エネルギーを感じるにはいられない。
絶滅種といえば真っ先に思いつくのは恐竜だろう。地球は過去に5回の絶滅イベントに遭遇してきたが、そのうち1回は隕石による恐竜絶滅で外部要因になったのはこの1回のみだ。
それゆえに恐竜はまだ見つかっていない種も多く存在する可能性は十分ある。今回もチリで装甲恐竜であるアンキロサウルスの新種が見つかったと報告された。
アンキロサウルスの新種「ステゴウロス・エレンガッセン」
チリ大学の古生物学者であるヴァーガス氏が率いる研究チームはアンキロサウルスの新種「ステゴウロス・エレンガッセン」の化石を発見した。
ステゴウロス・エレンガッセンは犬程度のサイズの恐竜で、刃のような尾を持ったユニークな装甲恐竜であったという。
恐竜の中には、刺す武器として使えるトゲのついた尾を持つものや、棍棒のような尾を持つものがいるが、この新種は、これまでの動物には見られなかったものだ。
ステゴサウルスとは遠縁に過ぎない
名前はステゴサウルスに似ている。だが、実際は遠縁に過ぎないと結論付けた。ヴァーガス氏はこれを「アンキロサウルスの失われた家系」と呼んでいる。
研究チームが頭蓋骨の断片などをDNA分析したところ、ステゴサウルスとは遠縁で、実は南半球では珍しい、装甲恐竜であるアンキロサウルスの仲間だったのである。
今回の新種の化石は約7200万年前から7500万年前のものだが、ステゴサウルスは約1億年前に絶滅している。
アンキロサウルスとは
ステゴウロス・エレンガッセンは「アンキロサウルスの失われた家系」であるとされたが、ではアンキロサウルスはどのような恐竜だったのだろうか。
アンキロサウルスは、白亜紀の最末期、約6,800〜6,600万年前に生息していた装甲恐竜の一群で体長は6〜8メートル、体重は8トンで、四肢で歩行する。
体は大きく頑丈で、外敵から身を守るために非常に頑丈な装甲で覆われていた。頭蓋骨などの骨は融合しており、全身が強固な構造になっていた。
また、アンキロサウルスには尾部に棍棒のようなものがあり、外敵から身を守るだけでなく、同種の動物との戦闘にも使われていたと考えられている。
アンキロサウルスは、超大陸パンゲアが分裂してできたローラシア大陸とゴンドワナ大陸(Wikipedia)の両方で進化してきた。
ローラシア大陸北部のアンキロサウルスはよく知られているが、ゴンドワナ大陸は装甲恐竜そのものが謎に包まれている。今回の研究は、それらに新たな光を当ててくれるかもしれない。
ステゴウロス・エレンガッセンの特徴
ステゴウロス・エレンガッセンの化石は前端が腹の上で平らになっており、後端は低い位置に角度をつけており、まるで流砂に捕まったような状態で発見された。
鳥のような鼻から尾の先までの長さは約2メートルだが、人間の太もものあたりまでしかない。
尾は、大型の捕食者から身を守るためのものであったり、身体からは鎧のような骨が突き出ているなど、捕食されないよう身を守りつつも戦う選択肢も得るように進化したと推測される。
化石はこれまでこの種の動物が生息したことがない地域で発見された事も非常に興味深い。
ステゴウロス・エレンガッセンは、ナイル川のような扇状地に住んでいて、その間には曲がりくねった川や島があった。 現在のチリ中央部から南部に見られるようなノトファーガスの森林が、草本やシダ類とともに豊富に見つかっている。
これは白亜紀後期の典型的な南方の環境であり、この時期に南半球全体で見られる数少ない大陸堆積物のひとつである。
ステグロスは草食動物で、水辺に好んで住んでいた可能性がある。小さな骨と大きな骨膜で覆われた丈夫な皮膚を持ち、前述したような刃状の尾という武器を持っていたので、小型のノアサウルス類や大型のメガラプトル類などの捕食恐竜は脅威にならなかっただろうと推測されている。